大島真寿美さんの小説『ピエタ』について、詳しいあらすじを探していませんか。音楽と歴史が織りなす感動的な物語として知られていますが、具体的にどのような内容なのか、気になっている方も多いでしょう。
また、物語を彩る登場人物や、小説「ピエタ」の舞台はどこなのか、ピエタを書いた人は誰なのか、といった基本的な情報も知りたいところです。さらに、物語の核心に触れるネタバレや、心揺さぶられた読者の感想、小泉今日子さん主演で話題となった舞台のキャストについても関心が集まっています。この記事では、あなたのそんな疑問に全てお答えします。
- 小説『ピエタ』の詳しいあらすじと物語の背景
- 作品を彩る主要な登場人物たちの関係性
- 物語の核心に迫るネタバレと感動のクライマックス
- 舞台版のキャストや作者、読者の感想といった関連情報
まずは小説「ピエタ」のあらすじから解説

- 物語の導入となるあらすじ
- 物語を彩る主な登場人物
- 小説「ピエタ」の舞台はどこ?
- 小説「ピエタ」を書いた人は誰?
- 2012年本屋大賞で第3位に輝く
物語の導入となるあらすじ

物語の幕が開くのは、栄華と退廃の空気が混じり合う18世紀の水の都ヴェネツィア。ヨーロッパ随一の文化都市として爛熟の時を迎えながらも、1000年続いた共和国の歴史には、緩やかな終わりの影が差し始めていました。物語の語り手は、親に捨てられた孤児を養育するピエタ慈善院で育ち、現在はその事務方を務める主人公のエミーリアです。
かつては慈善院が誇る「合奏・合唱の娘たち」の一員としてヴァイオリンを弾いていた彼女の元に、ある日、一通の知らせが届きます。それは、ウィーンにて客死した恩師、高名な音楽家アントニオ・ヴィヴァルディの訃報でした。ピエタの音楽を全盛期に導いた偉大な師の死に、エミーリアは静かな衝撃を受けます。
時を同じくして、エミーリアの前に一人の女性が現れます。幼い頃にピエタで共にヴィヴァルディから指導を受けた旧知の仲である、貴族の娘ヴェロニカです。彼女はエミーリアに対し、「先生が私のために作ってくれた特別な楽譜を探してほしい」という、不思議な依頼を持ちかけます。その楽譜の裏には、若き日のヴェロニカが書いた大切な詩が記されているというのです。
慈善院への大口の寄付を条件としたその奇妙な依頼に、財政難に頭を悩ませていたエミーリアは戸惑いながらも引き受けざるを得ませんでした。この一枚の楽譜の行方を追うことをきっかけに、エミーリアはこれまで知ることのなかった恩師の人間的な側面や、関わりのあった様々な女性たちの人生に触れていきます。
それは同時に、彼女自身が心の奥底に封印してきた過去の記憶と向き合う旅の始まりでもありました。歴史の大きな流れの中で、立場の違う女性たちが育む静かながらも強い絆と、それぞれの人生が描かれる感動的な物語です。
物語を彩る主な登場人物

小説『ピエタ』は、個性的で魅力的な登場人物たちが物語に深みを与えています。特に物語の中心となる女性たちの関係性は、この作品の大きな見どころです。ここでは主要な登場人物を紹介します。
エミーリア
本作の主人公であり、物語の語り手です。ピエタ慈善院に捨てられた孤児で、かつては「合奏・合唱の娘たち」の一員としてヴァイオリンを弾いていました。現在は演奏の第一線から退き、慈善院の事務職員として働いています。真面目で心優しい性格ですが、心の内に秘めた想いを抱えています。
アンナ・マリーア
エミーリアの幼なじみで、同じくピエタ慈善院で育ちました。実在したヴァイオリニストであり、ヴィヴァルディがその才能を高く評価し、彼女のために多くの協奏曲を作曲したと言われています。ずば抜けた音楽の才能を持ち、ピエタを代表する演奏家として名声を博します。
ヴェロニカ
貴族の娘で、かつてピエタで楽器を習っていました。若くして結婚と死別を繰り返し、実家に戻っている寡婦です。誇り高く知的な女性で、エミーリアにヴィヴァルディの特別な楽譜を探すよう依頼します。この依頼が、物語を大きく動かすきっかけとなります。
クラウディア
ヴィヴァルディの長年の愛人であったとされるコルティジャーナ(高級娼婦)です。非常に聡明で広い見識を持ち、政治や芸術にも通じています。身分や立場の違うエミーリアやヴェロニカに対しても分け隔てなく接し、彼女たちの心の拠り所となる重要な人物です。
その他の登場人物
他にも、ヴィヴァルディの駆け落ち相手と噂された歌手のアンナ・ジローや、ヴィヴァルディの姉妹、ゴンドラ漕ぎのロドヴィーゴなど、多くの人物が物語に関わり、ヴィヴァルディの多面的な人物像を浮かび上がらせます。
小説「ピエタ」の舞台はどこ?

この物語の舞台は、18世紀のイタリア・ヴェネツィア共和国です。当時のヴェネツィアは、「水の都」としてヨーロッパ随一の文化都市として栄華を極めていました。特に音楽が盛んで、多くの歌劇場が立ち並び、カーニバルはヨーロッパ中から観光客を集めるほどの一大イベントでした。
しかし、物語が描かれる18世紀半ばは、1000年以上続いた共和国の力が衰え始め、やがてナポレオンによって滅ぼされる未来へと向かう、爛熟と退廃が入り混じった黄昏の時代でもあります。このような時代の空気が、登場人物たちの人生の哀歓と重なり、物語に深い奥行きを与えています。
物語の中心的な舞台となるピエタ慈善院(オスペダーレ・デッラ・ピエタ)は、実際にヴェネツィアに存在した施設です。ここは親に捨てられた孤児たちを養育する場所で、特に音楽的才能に恵まれた少女たちは「合奏・合唱の娘たち」として徹底した音楽教育を受けました。彼女たちの演奏会はヨーロッパ最高レベルと評され、慈善院の重要な収入源にもなっていたのです。
小説「ピエタ」を書いた人は誰?
本作の作者は、小説家の大島真寿美(おおしま ますみ)さんです。1962年に愛知県で生まれ、1992年に「春の手品師」で第74回文學界新人賞を受賞して作家デビューを果たしました。
デビュー以来、丁寧な筆致で人間の心の機微を描く作品を数多く発表しています。代表作には『チョコリエッタ』『虹色天気雨』『あなたの本当の人生は』などがあります。そして、本作『ピエタ』が2012年の本屋大賞で高い評価を受けた後、さらに注目を集める存在となりました。
記憶に新しいところでは、2019年に『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』で第161回直木三十五賞を受賞し、人気と実力を兼ね備えた作家としての地位を確固たるものにしています。多くの読者が、『ピエタ』こそがその大きな飛躍のきっかけとなった作品だと感じています。
2012年本屋大賞で第3位に輝く
『ピエタ』は、出版業界で非常に権威のある賞の一つ、本屋大賞の2012年(第9回)において第3位に選ばれました。本屋大賞は、「全国書店員が選んだ いちばん! 売りたい本」をコンセプトに、全国の書店員の投票だけで選ばれるユニークな文学賞です。
過去の受賞作にはベストセラーや映像化された作品も多く、読書好きなら誰もが注目する賞と言えるでしょう。その中で第3位という高い評価を得たことは、『ピエタ』がジャンルを問わず多くの読者の心を掴む普遍的な魅力を持った作品であることを証明しています。
この受賞をきっかけに大島真寿美さんの名が広く知られるようになり、多くの読者が『ピエタ』を手に取るきっかけとなりました。派手さはないものの、じっくりと心に染み渡る物語が、現場で本を売るプロである書店員たちから熱い支持を受けたのです。
小説「ピエタ」のあらすじ以外の見どころ

- 物語の核心に触れるネタバレ解説
- 作中に登場するヴィヴァルディの楽曲
- 心に響いたという読者の感想を紹介
- 小泉今日子さん主演の舞台キャスト
- 総括:小説「ピエタ」のあらすじと魅力
物語の核心に触れるネタバレ解説

【注意】ここからは物語の結末に触れる内容が含まれます
未読の方は、物語の感動を損なう可能性がありますのでご注意ください。
エミーリアはヴェロニカから依頼された楽譜を探す中で、ヴィヴァルディの愛人であったクラウディアと出会い、深い絆で結ばれていきます。立場も境遇も違うエミーリア、ヴェロニカ、クラウディアの三人が心を通わせる夜の場面は、本作で最も印象的なシーンの一つです。
しかし、探し求めていた楽譜の行方は杳として知れません。物語が終盤に差しかかり、病に倒れたクラウディアが亡くなった日、事態は思わぬ方向へ動きます。クラウディアの葬儀のゴンドラを漕ぐロドヴィーゴが、ふと一曲の歌を口ずさむのです。
その歌こそ、ヴェロニカが書いた詩に、ヴィヴァルディ自身が曲をつけたものでした。ヴィヴァルディは、貴族の娘であるヴェロニカへの想いを秘め、誰にも知られることなく、親しいゴンドラ漕ぎにだけその歌を託していたのです。歌のタイトルは「むすめたち、よりよく生きよ」。この不意打ちの展開と、亡き師からの時を超えたメッセージに、涙腺が決壊した読者も少なくありません。
ラストシーンでは、長らく演奏から離れていたエミーリアが、再びヴァイオリンを手に取ります。それは、幼い日にヴィヴァルディから教わった「他者と音を合わせる喜び」を取り戻す瞬間でした。過去の悔いや悲しみを乗り越え、彼女たちの人生がこれからも続いていくことを予感させる、静かで希望に満ちた結末です。
作中に登場するヴィヴァルディの楽曲

『ピエタ』の物語全体に流れているのが、ヴィヴァルディの美しい音楽です。特に重要な役割を果たすのが、協奏曲集『調和の霊感』(L’estro armonico)です。これはヴィヴァルディ初期の代表作で、全12曲から構成されています。
物語の冒頭とラストで、エミーリアたちがこの曲集の中の一曲を演奏します。どの曲かは具体的に示されていませんが、他者と音を合わせる「和声の楽しさ」を象徴する楽曲として描かれています。
『調和の霊感』に含まれるヴァイオリン協奏曲
作中では「ヴァイオリン協奏曲」とあるため、以下のいずれかの曲ではないかと推測されています。
- 協奏曲第3番 ト長調 RV 310
- 協奏曲第6番 イ短調 RV 356
- 協奏曲第9番 ニ長調 RV 230
- 協奏曲第12番 ホ長調 RV 265
もちろん、ヴィヴァルディの最も有名な作品である『四季』も、当時のヴェネツィアの活気や季節の移ろいを感じさせ、物語のBGMとして最適です。特に「夏」や「冬」の激しい楽章は、登場人物たちのドラマティックな運命と重なります。
心に響いたという読者の感想を紹介

『ピエタ』は多くの読者の心を捉え、様々な感想が寄せられています。ここでは、その一部を紹介します。
Aさん(40代女性)
静かな物語なのに、最後の歌のシーンでは涙が止まりませんでした。登場する女性たちが、それぞれ自分の境遇の中で懸命に、そして気高く生きている姿に胸を打たれます。自分も「よりよく生きよ」と励まされたような気持ちになりました。
Bさん(30代男性)
クラシック音楽や歴史には詳しくありませんでしたが、ヴェネツィアの街の描写が美しく、まるで自分もその場にいるかのような感覚で読み進められました。身分や立場を超えた女性たちの友情が本当に素敵です。
Cさん(50代女性)
主人公エミーリアの年齢が自分と近いこともあり、過去を振り返り、あったかもしれない未来に思いを馳せる気持ちに深く共感しました。読み終えた後、ヴィヴァルディの音楽を聴きながら、物語の余韻に浸っています。人生の黄昏時に出会えてよかった一冊です。
このように、感動的なクライマックス、美しい情景描写、そして登場人物たちの生き様への共感が、多くの読者から高く評価されています。
小泉今日子さん主演の舞台キャスト
小説『ピエタ』は、2023年夏に舞台化され、大きな話題を呼びました。この舞台は、女優の小泉今日子さんが自身の会社「明後日」でプロデュースし、自ら主人公エミーリア役で主演を務めました。
小泉さんは、以前からこの作品に惚れ込み、舞台化を熱望していたそうです。コロナ禍の影響で一度は上演を断念し、2020年には朗読劇として上演。そして2023年、満を持しての本格上演が実現しました。
実力派の俳優陣が顔を揃えたキャストも魅力の一つです。以下に主要なキャストをまとめました。
役名 | 俳優名 |
---|---|
エミーリア | 小泉今日子 |
ヴェロニカ | 石田ひかり |
クラウディア | 峯村リエ |
パオリーナ | 広岡由里子 |
ザネータ | 伊勢志摩 |
アンナ・マリーア | 会田桃子(ヴァイオリニスト) |
脚本・演出はペヤンヌマキさんが担当し、原作の持つ静かで美しい世界観を見事に舞台上で表現しました。
総括:小説「ピエタ」のあらすじと魅力
最後に、この記事で解説した小説『ピエタ』の要点をまとめます。
- 小説ピエタは2011年に刊行された大島真寿美の作品
- 2012年の本屋大賞で第3位を受賞し高く評価された
- 物語の舞台は18世紀のイタリア・ヴェネツィア共和国
- 主人公はピエタ慈善院で育った事務員のエミーリア
- 物語は恩師ヴィヴァルディの訃報から始まる
- 貴族の娘ヴェロニカから特別な楽譜探しを依頼される
- 楽譜探しを通して様々な人物と出会い過去と向き合う
- 登場人物は主人公エミーリアや天才演奏家アンナ・マリーアなど
- ヴィヴァルディの愛人クラウディアも重要な役割を担う
- 物語の鍵は実在の作曲家アントニオ・ヴィヴァルディ
- クライマックスでは失われた楽譜の謎が感動的に解き明かされる
- ヴィヴァルディの楽曲「調和の霊感」が象徴的に登場する
- 身分や立場を超えた女性たちの静かで強い絆が描かれる
- 2023年には小泉今日子のプロデュース・主演で舞台化された
- 人生の哀歓と希望を描いた心に染み渡る物語である