
こんにちは。あらすじブックマーク、管理人の「おうみ」です。
村山由佳さんの『天使の卵』、その小説のあらすじを知りたくて検索されたんだと思います。ですが、「天使の卵」のあらすじを調べると、映画版の情報とごっちゃになって「あれ?どっちが本当?」と混乱してしまうことが多いんですよね。
特に小説版の衝撃的な結末のネタバレや、映画との決定的な違い、さらには登場人物である春妃と夏姫の複雑な関係性、そして続編『天使の梯子』で二人がどうなったのか…。知りたいことがたくさんあると思います。
この記事では、原作小説に絞って、その切ない物語の核心を「あらすじブックマーク」なりに整理してみました。
- 小説版『天使の卵』の純粋なあらすじ
- 映画版(2006年)との決定的な違い
- 物語の核心となる結末のネタバレ
- 続編『天使の梯子』で描かれた「その後」
「天使の卵」小説のあらすじを時系列で解説
まずは、原作小説の『天使の卵』がどのような物語なのか、その核心となる部分を時系列で追っていきましょう。この時点で、すでに映画版のイメージとはかなり違うことに驚くかもしれませんね。本当に、清冽で、残酷で、切ない物語なんです。
小説版の主要登場人物と相関図
物語を理解するために、まずは主要な登場人物3人を知っておくのが一番ですね。この3人の関係が、物語のすべてと言ってもいいかもしれません。特に、春妃と夏姫が実の姉妹であるという点が、この物語の最大の悲劇の種になります。
本作は、村山由佳さんのデビュー作でありながら、第6回「小説すばる」新人賞を受賞しています(集英社 小説すばる新人賞 公式サイト)。その衝撃的な内容と筆致は、当時から高く評価されていたんですね。
主要登場人物と関係性
- 一本槍 歩太(いっぽんやり あゆた)
主人公で、物語の語り手(「僕」)。19歳の美術大学を目指す浪人生です。精神病を患い、長期入院している父・直規がいます。この家庭環境も、彼の精神性に影を落としていますね。 - 五堂 春妃(ごどう はるひ)
メインヒロイン。歩太より8歳年上の精神科医。凛とした美しさを持ち、歩太の父(直規)が入院する精神病院の新しい主治医として登場します。「五堂」は結婚後の姓で、既婚者です。 - 斎藤 夏姫(さいとう なつき)
もう一人のヒロイン。歩太の高校時代からのガールフレンド。歩太が浪人生である現在も交際を続けています。そして物語の核心として、彼女は五堂春妃の実の妹です。
一見すると、主人公の「歩太」をめぐる「春妃」と「夏姫」の三角関係のように見えますが、この物語の恐ろしさは、春妃と夏姫が姉妹であるという事実を、歩太が知らないまま春妃と恋に落ちてしまう点にあります。
出会いと禁断の恋の始まり

物語は、主人公の歩太が満員電車の中で、左手に包帯を巻いた、凛としたたたずまいの年上の女性に出会うところから始まります。それが、8歳年上の精神科医、五堂春妃です。
歩太には夏姫という大切な恋人がいるにも関わらず、春妃の持つ清冽な雰囲気、どこか儚げな美しさに一瞬で心を奪われてしまいます。「恋人がいるのに」という後ろめたさを感じつつも、その想いは止められず、記憶だけを頼りに彼女の絵(デッサン)を描き始めるほどでした。
その後、歩太は入院中の父親・直規の見舞い先で、衝撃的な再会を果たします。あの電車で出会った女性・春妃が、父親の新しい主治医として赴任してきたのです。
運命的な再会に、歩太は医師と患者の家族という立場を忘れ、春妃に惹かれていきます。
歩太は診察室で春妃と会話を重ね、自分が描いた春妃の似顔絵を渡したり、美大受験へのプレッシャーや複雑な家庭環境の悩みを打ち明けていきます。春妃はそんな歩太に対し、「人には、自分の幸せだけを考えていい時期があると思うわ」と、彼の迷いを肯定するような言葉をかけます。
この言葉に救われた歩太は、ますます春妃への想いを募らせます。二人は医師と患者の家族という関係を超え、病院の外(春妃のマンション)でも密かに会うようになり、急速に関係を深めていくことになります。
恋人の姉だった春妃(ネタバレ)

ここが物語の核心であり、最大の「ネタバレ」ポイントです。読者が「まさか」と思う瞬間ですね。
歩太は春妃との禁断の関係にのめり込んでいきます。既婚者であり、8歳も年上の精神科医という「大人」に見える春妃が、自分にだけ見せる弱さや素顔に、彼は夢中になっていきました。
しかし、ある時の会話の中で、春妃の口から衝撃的な事実が語られます。
彼女の旧姓は「斎藤」。
そう、歩太が恋に落ちた五堂春妃は、歩太の恋人である斎藤夏姫の実の姉だったんです。
歩太は、自分が「恋人の実の姉」と禁断の恋に落ちていたという事実に直面します。この瞬間から、歩太、春妃、夏姫の三者の関係は、もう後戻りできない破滅的な結末へと向かい始めます。
夏姫が放つ「最後の言葉」
禁断の関係は、当然ながら妹の夏姫に知られることになります。その露見の仕方は、小説ならではの表現ですが、「ピシッといった効果音と共に空気が凍る」と表現されるほど、本当に息が詰まるほど衝撃的なものでした。
姉と恋人の裏切りを知った夏姫は、当然、激しく動揺します。信じていた二人に同時に裏切られたのですから。
そして夏姫は、深い絶望と怒りから、感情的になり、姉の春妃に対して決定的な「最後の言葉」を放ってしまいます。
それは、夏姫自身が後に「言わなければよかった」と、永遠に後悔し続けることになる、あまりにも残酷な一言でした。この言葉が、春妃の心を完全に壊してしまう、最後の引き金となります。
悲劇的な結末と「永遠の後悔」

夏姫の「最後の言葉」が引き金となり、その直後、春妃は(詳細は描かれないものの、自ら)命を絶ってしまいます。
この結末は、本当に救いがないと感じるかもしれません。美しいと思っていた恋が、三者三様の「未熟さ」によって、最悪の形で終焉を迎えるのです。
そして、この悲劇は、残された二人に重く、消えない「後悔」を遺します。
残された二人の「対照的な後悔」
- 夏姫の後悔(行動の後悔)
姉にあの残酷な言葉を「言ってしまった」ことへの後悔。彼女は、自分の言葉が姉を殺したという罪の意識を永遠に背負うことになります。 - 歩太の後悔(不行動の後悔)
春妃の苦悩に気づきながらも、彼女を「抱きしめなかった」、そして「愛していると言わなかった」ことへの後悔。彼は、行動しなかったことが彼女を救えなかったという悔いを抱え続けます。
登場人物たちの「未熟さ」(=卵)が引き起こした悲劇であり、読者に「取り返しのつかない言葉」や「行動しなかった後悔」という重いテーマを突きつける、「後悔」の物語として、物語は一旦幕を閉じます。
「天使の卵」小説のあらすじ検索の注意点
「天使の卵 小説 あらすじ」で検索したときに、情報が混乱する最大の理由。それは、2006年に公開された映画版(主演:市原隼人さん、小西真奈美さん、沢尻エリカさん)の存在です。ここでは、小説と映画がいかに違うのか、そして物語の「その後」について解説しますね。
映画版との決定的な違い

「あらすじが全然違う!」となる原因はこれです。小説(原作)と映画版は、登場人物の名前が一部似ているだけで、もはや別作品と言っていいほど設定が違います。
最大の変更点は、小説の根幹だった「恋人(夏姫)の姉(春妃)との禁断の恋」という設定が、映画版では完全に削除されていることです。
ヒロインの名前からして違いますからね。
映画版の根本的な設定変更
ヒロインの変更
小説では「五堂春妃(ごどう はるひ)」ですが、映画では「春日(かすが)」という全く別の人物に変更されています。職業も「精神科医」ではなく「看護学生」(病院でバイト)になっています。
夏姫の役割の変更
小説では「姉を死に追いやる妹」という重い役回りでしたが、映画では歩太と春日を意図的に引き合わせる、少し不思議な存在として描かれています。
映画版のストーリーは、小説には一切登場しない「ヒロイン(春日)の兄・幸広(ゆきひろ)」という人物を軸に進みます。
映画版は、「春日の兄(幸広)が、10年前に春日の恋人であった斉藤を刺した罪で服役中」という、原作にはない独自のプロットで進んでいくんです。
映画は結末が全く違う?
設定が違うのですから、当然、結末も全く違います。ここが小説のあらすじを探している人が一番混乱するポイントかもしれません。
小説版が「悲劇的な結末(Tragic End)」と「永遠の後悔」を描いたのに対し、映画版は驚くことに希望のある結末(Happy End)なんです。
映画版では、ヒロイン(春日)が抱える過去(兄の罪や、植物状態だった元恋人・斉藤への贖罪)が清算されます。春日は「ごめんね、全部終わらせたかったの。私はもう一人じゃないから」と歩太に告げ、過去と決別します。
そして、ラストシーンで歩太と春日はキスを交わし、二人の関係が未来へ続いていくことを示唆して物語は終わります。
小説のあらすじを知りたくて映画を観た人は、「話が全然違う!」「春妃はどこ?」「夏姫との関係は?」と驚くことになりますね。
| 比較項目 | 小説『天使の卵』 (原作) | 映画『天使の卵』 (2006年版) |
|---|---|---|
| ヒロイン | 五堂 春妃(ごどう はるひ) | 春日(かすが) |
| ヒロインの職業 | 精神科医 | 看護学生 |
| 物語の核心 | 恋人(夏姫)の実の姉(春妃)との禁断の恋 | 兄が刺した元恋人(斉藤)への贖罪を抱える女性(春日)との恋 |
| 物語の結末 | 悲劇(Tragic End) ・ヒロイン(春妃)の死 ・残された歩太と夏姫の「永遠の後悔」 | 希望(Happy End) ・ヒロイン(春日)が過去を清算 ・歩太と春日がキスをし、結ばれる |
こうして見比べると、本当に全く違う物語だというのが分かりますよね。小説のあらすじを知りたい場合は、映画の情報と混同しないよう注意が必要です。
続編『天使の梯子』は救いの物語

『天使の卵』の、あのあまりにも救いのない結末を読んだら、「残された歩太と夏姫は、その後どうなったの?」「あんな後悔を抱えたまま生きていくの?」と誰もが思うはずです。私も思いました。
その「その後」を描いたのが、正式な続編である『天使の梯子(てんしのはしご)』です。この続編の存在は、本当に大きいと思います。
『天使の卵』が「後悔」と「喪失」の物語だとしたら、『天使の梯子』は、10年の時を経た二人の「赦し」と「救済」、そして「前進」の物語と言えますね。前作の悲劇から10年後の世界が描かれます。
前作を読んで「辛すぎる…」と思った方には、ぜひこの続編まで読んでほしいなと思います。
10年後の歩太と夏姫の関係
『天使の梯子』は、『天使の卵』の悲劇から10年後が舞台です。
斎藤夏姫(29歳)は、元高校教師。姉の死に対する罪悪感から「自分を赦せない」まま、心の中に「特別な男(=歩太)」を棲まわせたまま、時を止めています。
一本槍歩太も登場します。10年を経て、精神的に逞しく成長した大人の男性として、夏姫のことを静かに見守り続けています。
この続編では、夏姫の元教え子である大学生・古幡慎一(通称:フルチン)が、もう一人の主要な視点人物として登場します。そして、彼は夏姫に対して一途な想いを寄せます。その年齢差が、奇しくも「8歳差」。
年齢差の反復と「救済」
この「8歳差」というのが、この続編の最大の仕掛けだと私は思います。
かつて『天使の卵』で、歩太が春妃(姉)に抱いた「8歳差の恋」。
今度は『天使の梯子』で、夏姫が、慎一から「8歳差の恋」を向けられる側になります。
夏姫は、この慎一からの一途な好意を受けることで、かつて姉(春妃)が置かれていた「8歳年下の男性(歩太)と恋に落ちる」という立場と心情を、10年の時を経て初めて身をもって追体験することになるんです。
この追体験こそが、夏姫にとって「何よりの良薬」となります。10年間理解できなかった姉の苦悩や葛藤に寄り添うことができた夏姫は、ようやく姉の死に対する罪の意識から解放され、「自分を赦す」ための一歩を踏み出します。
前作が「春妃・夏姫」の姉妹が「歩太」をめぐる三角関係だったのに対し、本作では「歩太・慎一」という二人の男性が「夏姫」をめぐる三角関係へと、構造が反転しているのも面白い点ですね。
『天使の卵』の結末で受けた傷が、この『天使の梯子』でようやく癒やされ、二人が「前進」する。ここまで読んではじめて、『天使の卵』という一つの長い物語が完結すると私は思います。
タイトル「天使の卵」の意味
なぜ『天使の卵』というタイトルなのか。これは私の解釈も入りますが、「卵」はまさしく登場人物たちの「未熟さ」の象徴なんだと思います。
「卵」は、まだ孵化もしていない、何者でもない状態です。
19歳の歩太はもちろん「卵」。恋人の夏姫も、姉への嫉妬や独占欲をコントロールできない「卵」。そして、8歳年上で「大人」に見えた春妃さえも、既婚者でありながら8歳年下の青年に救いを求めてしまったという意味で、精神的な「未熟さ=卵」を抱えていたのかもしれません。
その「未熟さ」ゆえの危うさ、脆さが、あの悲劇を引き起こしてしまった…。
春妃の死という強烈な悲劇は、残された歩太と夏姫を強制的に「孵化」させた(=大人にならざるを得なくさせた)出来事であったと解釈できます。
そして、続編のタイトルである『天使の梯子』は、そのトラウマ的な「孵化」を経て、傷ついたまま10年を過ごした二人が、いかにして「天使の梯子」(=天からの救い、あるいは赦し)を見つけ、本当の意味で次の一歩を踏み出していくかを描いた物語、ということなのかなと思います。
「天使の卵」小説のあらすじまとめ
最後に、『天使の卵』の小説のあらすじについて、重要なポイントをまとめますね。
「天使の卵 小説 あらすじ」と検索された方が、映画版との違いに混乱せず、原作小説の持つ本当の魅力を知る手助けになれば嬉しいです。
『天使の卵』小説版まとめ
- 主人公(歩太)が、恋人(夏姫)の実の姉(春妃)と禁断の恋に落ちる物語。
- 結末はヒロイン(春妃)が死ぬという、救いのない悲劇的な結末(Tragic End)。
- 残された歩太と夏姫は、それぞれ「行動しなかった後悔」と「行動した後悔」を背負う。
- 映画版は設定も結末も全く違う「別作品」(Happy End)として観るべき。
- 続編『天使の梯子』で、10年後の歩太と夏姫の「救済」と「前進」が描かれる。
もし「天使の卵」のあらすじを映画版のイメージ(ハッピーエンド)で想像していたら、小説版の衝撃はかなりのものだと思います。
ですが、この「救いのなさ」と「永遠の後悔」こそが『天使の卵』の本質であり、だからこそ続編の『天使の梯子』で描かれる「救済」が、より深く心に響くのかもしれませんね。

