柚木麻子さんの衝撃作、小説『BUTTER(バター)』に興味をお持ちでしょうか。「バター 小説 あらすじ」というキーワードで検索されたあなたは、きっとこの物語の核心に迫る情報を探していることでしょう。
この記事では、読者の心を掴んで離さない『BUTTER』のあらすじを詳しく解説します。さらに、多くの人が関心を寄せる登場人物、カジマナのモデルとなった実在の人物や、ノンフィクションかと錯覚するほどリアルな元ネタの事件にも深く切り込んでいきます。
また、著者である柚木麻子の経歴は?という疑問に答えるとともに、多様な読者の感想、物語の重要な舞台となるバター小説のレストランの情報、そして手に取りやすい文庫本についてもご紹介します。この記事を読めば、『BUTTER』の世界をより深く、多角的に味わうことができるはずです。
- 小説『BUTTER』の詳しいあらすじ
- モデルとなった人物や元ネタの事件背景
- 作品に登場する料理やレストランの魅力
- 読者の様々な感想と作品の評価
柚木麻子『バター』小説のあらすじと概要

- 物語の導入となるあらすじを紹介
- 登場人物カジマナのモデルは実在する?
- ノンフィクション?元ネタとなった事件の真相
- 著者である柚木麻子の経歴は?
- 作品が問いかける現代社会へのメッセージ
- 読みやすい文庫本の情報
物語の導入となるあらすじを紹介

『BUTTER』の物語は、週刊誌の記者として働く30代の女性、町田里佳が主人公です。彼女は仕事や恋人との関係、そして社会から押し付けられる「女性はこうあるべき」という無言の圧力に、漠然とした息苦しさと焦りを抱えながら日々を過ごしていました。
そんな彼女の前に現れたのが、連続不審死事件の容疑者として世間を震撼させていた梶井真奈子(通称カジマナ)です。若くも美しくもない、むしろ肥満体型と言える容姿の彼女が、なぜ複数の男性を虜にし、多額の金銭を貢がせた末に殺害したのか。その謎は多くの人々の好奇心を掻き立てていました。
里佳は、この稀代の悪女と見なされるカジマナに強く惹かれます。彼女の底知れない自己肯定感の源泉を探れば、自分が抱える生きづらさを解消するヒントが得られるかもしれない。そう考えた里佳は、カジマナの独占インタビューを取り付けようと拘置所での面会に臨みます。
しかし、カジマナは取材の条件として「美食について語り合うこと」を提示。こうして、二人の奇妙な師弟関係が始まります。カジマナの指示通り、高級なエシレバターを使ったバター醤油ごはんを味わい、次々と濃厚な料理の世界に足を踏み入れていく里佳。
カジマナの「女は誰に対しても寛容であれ、と学んできましたが、どうしても、許せないものが二つだけある。フェミニストとマーガリンです」といった独自の哲学に触れるうち、里佳の価値観は根底から揺さぶられ、抑圧してきた自身の欲望と向き合い始めます。
食生活の変化は里佳の外見をも変え、体重は増えていきますが、それは彼女が社会の呪縛から解き放たれていく過程のようでもありました。果たして、里佳はカジマナという人物を通して事件の真相にたどり着けるのか。それとも、彼女自身がカジマナに飲み込まれてしまうのか。
この物語は単なる事件ルポではなく、現代社会に生きる女性たちの心の奥底に潜む欲望や葛藤を描き出し、自分だけの「人生のレシピ」を見つけることの重要性を問いかける、濃厚な社会派長編小説です。
登場人物カジマナのモデルは実在する?
結論から言うと、『BUTTER』の強烈なキャラクター・梶井真奈子(カジマナ)には、実在のモデルが存在します。
その人物は、2000年代後半に日本中を震撼させた「首都圏連続不審死事件」の犯人、木嶋佳苗死刑囚です。
木嶋佳苗は、婚活サイトで知り合った複数の男性から多額の金銭を得て、そのうち3人を練炭自殺に見せかけて殺害した罪で死刑判決を受けました。彼女が世間の注目を集めたのは、その決して美人とは言えない容姿と、法廷でも悪びれることなく自身の魅力を語る特異なキャラクター性にありました。
また、彼女はグルメブログを運営しており、高級食材を使った手料理を頻繁に披露していました。この「食へのこだわり」と「異様な自己肯定感」という点が、作中のカジマナの人物像に色濃く反映されています。
あくまでモチーフである点に注意
『BUTTER』は木嶋佳苗の事件をモチーフにしていますが、物語の展開や登場人物の心理描写は著者・柚木麻子さんによる完全なフィクションです。ノンフィクション・ノベルとしてではなく、一つの文学作品として楽しむことが重要です。
ノンフィクション?元ネタとなった事件の真相

前述の通り、『BUTTER』の元ネタは、2009年に発覚した「首都圏連続不審死事件」です。
この事件は、婚活サイトを舞台にした前代未聞の連続殺人事件として、連日メディアで大きく報じられました。犯人である木嶋佳苗は、料理教室に通い、高級食材で男性たちの胃袋を掴み、巧みに金銭を引き出していたとされています。
『BUTTER』では、この事件の概要をなぞりながらも、事件そのものの真相究明を主軸にはしていません。むしろ、この事件を取り巻くメディアの狂騒や、世間の人々の覗き見趣味、そして事件に影響されていく主人公・里佳たちの内面変化に焦点を当てています。
事件が社会に与えた衝撃
なぜ、男性たちは彼女に惹かれ、大金を渡し、命まで奪われてしまったのか。この事件は、多くの人々に「人の価値とは何か」「見た目と内面」「男女間の欲望」といった根源的な問いを投げかけました。
柚木麻子さんは、この社会的な問いを作品のテーマに昇華させ、カジマナというフィルターを通して、現代人が抱える心の闇や生きづらさを鋭く描き出しているのです。
著者である柚木麻子の経歴は?
『BUTTER』を生み出した著者・柚木麻子さんとは、どのような作家なのでしょうか。その経歴と作風に迫ります。
柚木麻子さんは1981年東京都生まれの小説家です。立教大学を卒業後、製菓メーカー勤務などを経て、2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞し、作家デビューしました。
女性同士の複雑な関係性を描いた作品が多く、特に『ナイルパーチの女子会』は第28回山本周五郎賞を受賞するなど、高い評価を得ています。
柚木麻子の主な受賞歴と代表作
- 『ナイルパーチの女子会』:第28回山本周五郎賞、第3回高校生直木賞 受賞
- 『BUTTER』:第157回直木三十五賞候補、英国ウォーターストーンズ「2024年 今年の本」受賞
- 『本屋さんのダイアナ』:2015年本屋大賞第4位
- 『伊藤くん A to E』:第150回直木三十五賞候補
柚木さんの作品は、女性の心理描写の巧みさと、現代社会が抱える問題をエンターテインメントに昇華させる手腕が特徴です。『BUTTER』もその代表例であり、国内外で多くの読者を獲得しています。
作品が問いかける現代社会へのメッセージ

『BUTTER』は単なるグルメ小説や事件小説の枠に収まりません。この作品は、現代社会に生きる私たちに多くの鋭い問いを投げかけてきます。
その中心的なテーマの一つが、「ルッキズム(外見至上主義)」への批判です。
主人公の里佳は、社会や周囲から押し付けられる「女性はこうあるべき」というプレッシャーに無意識に縛られています。一方、カジマナは世間の美醜の基準を全く意に介さず、自らの欲望に忠実に生きています。この対照的な二人の姿を通して、物語は「美しさとは何か」「自分らしく生きるとは何か」を読者に問いかけます。
「フェミニストとマーガリンです、どうしても許せないものが二つだけある」というカジマナのセリフは象徴的ですよね。この物語は、女性だけでなく、男性もまた社会的なプレッシャーにさらされていることを示唆しています。あなたが日々の生活で感じる「息苦しさ」の正体を、この小説が解き明かしてくれるかもしれません。
また、食欲や自己愛といった人間の根源的な欲望を肯定的に描きながらも、それが他者への支配や搾取につながる危うさも同時に描き出しています。この多角的でバランスの取れた視点が、物語に深い奥行きを与えているのです。
読みやすい文庫本の情報
『BUTTER』は単行本だけでなく、手軽に楽しめる文庫本も出版されています。初めて読む方や、外出先で読書を楽しみたい方には文庫版がおすすめです。
500ページを超える長編ですが、その濃密な物語に引き込まれ、一気に読み終えてしまう読者も少なくありません。
文庫本情報
タイトル | BUTTER |
---|---|
著者 | 柚木 麻子 |
出版社 | 新潮社 (新潮文庫) |
発売日 | 2020年2月28日 |
ページ数 | 560ページ |
ISBN | 978-4101202433 |
電子書籍版も各ストアで配信されているため、ご自身の読書スタイルに合わせて選ぶことができます。
『バター』小説のあらすじ以外の魅力と評価

- 海外でも高く評価される理由とは
- 物語に深みを与える料理の描写
- 物語を彩るバター小説のレストラン
- 読者の感想から見る作品の多面性
海外でも高く評価される理由とは

『BUTTER』は日本国内だけでなく、海外、特に英語圏で非常に高い評価を受けています。
特筆すべきは、2024年に英国の大手書店ウォーターストーンズが選ぶ「Book of the Year(今年の本)」に、英訳版『BUTTER』が選出されたことです。これは日本の小説としては快挙であり、作品の普遍的な魅力が国境を越えて認められた証と言えます。
海外で評価されたポイント
- 普遍的なテーマ:ルッキズムや女性の自己肯定といったテーマが、多くの国で共感を呼んだ。
- 日本の食文化への興味:バター醤油ごはんから高級フレンチまで、詳細な料理の描写が海外の読者にとって新鮮で魅力的だった。
- ユニークなキャラクター:カジマナのような強烈でアンチヒーロー的な女性像が、新しい文学的キャラクターとして受け入れられた。
- 質の高い翻訳:物語の持つ独特の雰囲気やニュアンスを損なわない翻訳が、作品の魅力を最大限に伝えた。
これらの理由から、『BUTTER』は単なる日本の小説ではなく、世界文学の文脈で語られるべき重要な一冊として認識されつつあります。
物語に深みを与える料理の描写

この小説のタイトルが『BUTTER』であることからも分かるように、「食」、特に「料理」の描写が物語の根幹をなしています。
作中に登場する料理は、単に美味しそうであるだけでなく、登場人物の心理や人間関係を映し出すメタファーとして機能しています。
バター醤油ごはん
物語の序盤でカジマナが里佳に作るよう命じるシンプルな料理。これは、里佳がカジマナの世界に足を踏み入れるための、いわば「儀式」のようなものです。高級なエシレバターを使うという指示に、カジマナの価値観が凝縮されています。
ブフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮込み)
カジマナが料理教室で習得した本格的なフランスの家庭料理。手間暇かけて煮込むこの料理は、彼女が男性たちを「手なずける」ために用いた、周到で計算高い戦略を象徴しているかのようです。
読者はこれらの詳細な料理描写を通して、登場人物たちの欲望や孤独、そして愛情への渇望を感じ取ることになります。まさに、五感で味わう文学作品と言えるでしょう。
物語を彩るバター小説のレストラン
『BUTTER』の魅力の一つに、実在するレストランや具体的な商品名が数多く登場することが挙げられます。これにより、物語にリアリティが生まれ、読者は主人公の里佳と共に美食の世界を旅するような感覚を味わえます。
恵比寿のジョエル・ロブション
カジマナが「王道のフレンチ」として里佳に訪れるよう指示するのが、恵比寿にある「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」です。ミシュランガイドで星を獲得し続ける世界的な名店であり、作中では贅沢と美食の象徴として描かれています。(参照:ジョエル・ロブション公式サイト)
新宿のラーメン屋「T」
高級店だけでなく、B級グルメも重要な役割を果たします。カジマナが里佳に「セックスした直後の深夜に食べろ」と奇妙な指令を出すのが、新宿・靖国通りにある塩バターラーメンの店です。この描写は、食と性が結びついた、人間の根源的な欲望を象徴するシーンとして印象に残ります。
これらのリアルな食の描写が、カジマナの異常なこだわりと、それに翻弄される里佳の姿をより鮮明に描き出しているのです。
読者の感想から見る作品の多面性

『BUTTER』は、その濃厚で強烈な内容から、読者の間で賛否両論、非常に多様な感想が寄せられています。ここでは、その一部を紹介し、作品の多面性を探ります。
肯定的な感想
- 「とにかく面白い。ページをめくる手が止まらなかった」
- 「女性が抱える生きづらさや葛藤がリアルで、深く共感した」
- 「料理の描写が官能的で、お腹が空いたし、色々と考えさせられた」
- 「自分を肯定することの大切さを教えられた気がする」
否定的な・戸惑いの感想
- 「読んでいて疲れた。登場人物の誰にも共感できなかった」
- 「バターのようにこってりしていて、胸焼けしてしまった」
- 「結局、何が言いたいのかよく分からなかった」
- 「実際の事件をモデルにしていることに、倫理的な疑問を感じた」
このように、読者の感想は真っ二つに分かれる傾向があります。これは、作品が読者自身の価値観や人生経験を鋭くえぐり、心を揺さぶる力を持っていることの裏返しです。
好き嫌いがはっきりと分かれる作品だからこそ、一度は手に取って、自分自身がどう感じるかを確かめてみる価値があるのかもしれません。
『バター』小説のあらすじについて総括
今回の記事の内容をまとめます。
- 物語は週刊誌記者の里佳が殺人容疑者カジマナを取材するところから始まる
- カジマナは食、特にバターに異常なこだわりを持つ特異な人物
- 里佳はカジマナの影響で価値観を揺さぶられ変貌していく
- 物語のモデルは首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗死刑囚
- ただし物語はフィクションであり事件をモチーフにした社会派小説
- 著者は女性心理の描写に定評のある柚木麻子
- 山本周五郎賞など数々の文学賞を受賞・候補となっている作家
- 現代社会のルッキズムや女性の生きづらさといったテーマを鋭く問う
- 作中にはジョエル・ロブションなど実在のレストランが登場する
- 海外での評価も高く英国ウォーターストーンズ「今年の本」に選出された
- 読者の感想は「面白い」という絶賛から「胸焼けする」という意見まで様々
- 濃厚でこってりとした読書体験は好き嫌いが分かれる可能性がある
- 単行本だけでなく手に取りやすい文庫本や電子書籍も刊行されている
- 事件の真相だけでなく現代人が抱える心の闇や欲望に深く切り込んでいる