大菩薩峠の小説のあらすじを解説!未完の結末や登場人物も

大菩薩峠の小説のあらすじを解説!未完の結末や登場人物も あらすじ・要約

日本文学史に燦然と輝く大長編時代小説『大菩薩峠』。その名前は知っていても、「一体どんな話なのだろう?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、壮大すぎる物語『大菩薩峠』の小説のあらすじを、初心者にも分かりやすく解説します。物語を彩る個性的な登場人物たちや、作品の読みどころとなる見どころ、そして多くの読者が気になる、なぜこの物語が未完のまま終わってしまったのかという謎にも迫ります。

作者である中里介山の人物像や、実際に読んだ人々の読者の感想、さらには青空文庫で無料で読めるかどうかの情報まで、この記事一本で『大菩薩峠』の全てがわかります。

この記事でわかること
  • 『大菩薩峠』がどんな物語かその概要が理解できる
  • 主人公・机竜之助をはじめとする主要な登場人物がわかる
  • 未完の理由や作品の見どころなど深い知識が得られる
  • 無料で作品に挑戦する方法がわかる

大菩薩峠の小説のあらすじと物語の核心

大菩薩峠の小説のあらすじと物語の核心
  • 大菩薩峠とはどんな話?あらすじを簡単に
  • 主人公・机竜之助と個性的な登場人物たち
  • 虚無の剣「音無しの構え」とは何か?
  • 物語はなぜ未完のまま終わったのか

大菩薩峠とはどんな話?あらすじを簡単に

『大菩薩峠』は、一言でいえば「虚無に取り憑かれた天才剣士・机竜之助(つくえりゅうのすけ)が、理由なき殺人を重ねながら幕末の動乱期を彷徨い歩く物語」です。

物語は、甲州の大菩薩峠で、主人公の机竜之助が何の理由もなく一人の老巡礼を斬り殺すという衝撃的な場面から始まります。彼は道場の師範代でありながら、奉納試合で対戦相手を惨殺し、その内縁の妻・お浜を連れて江戸へ出奔。彼の行く先々では常に血の雨が降ります。

その後、竜之助は新選組と関わったり、天誅組の変に参加したりと、歴史の渦に巻き込まれていきます。しかし、彼自身に思想や信条はなく、ただ流されるままに、あるいは自らの内に潜む衝動のままに剣を振るい続けます。やがて失明し、さらに心の闇を深めていく竜之助。物語は、彼を追う者、彼によって運命を狂わされた者たちの人生を織り交ぜながら、巨大な群像劇へと発展していきます。

単なる剣豪小説ではなく、人間の「業」や運命の残酷さを仏教的な思想を背景に描いた、非常に哲学的な作品ともいえます。

主人公・机竜之助と個性的な登場人物たち

主人公・机竜之助と個性的な登場人物たち

本作の魅力は、なんといっても強烈な個性を持つ登場人物たちです。ここでは物語の中心となる人物を何人か紹介します。

主人公:机竜之助(つくえ りゅうのすけ)

本作の中心人物。「音無しの構え」という魔剣を操る天才剣士ですが、その心は深い虚無に支配されています。善悪の判断基準を持たず、衝動的に辻斬りを重ねるアンチヒーローです。その生き様は、多くの後続作品に「ニヒルな剣客」像として影響を与えました。

主要な登場人物

竜之助を取り巻く人物たちも、それぞれが物語の主役になりうるほど個性的です。

名前役割・特徴
宇津木兵馬竜之助に兄を殺され、仇討ちのために旅を続ける若者。物語のもう一人の主人公ともいえる存在です。
お浜兵馬の兄の内縁の妻。竜之助に犯され、そのまま彼と出奔するという数奇な運命を辿ります。
お松物語冒頭、大菩薩峠で竜之助に祖父を殺された少女。盗賊の七兵衛に助けられ、成長していきます。
裏宿の七兵衛お松を助ける義賊。モデルは実在した人物といわれています。
駒井甚三郎物語後半の重要人物。英学や砲術に明るい学者肌の旗本で、竜之助とは異なる形で時代を動かそうとします。

虚無の剣「音無しの構え」とは何か?

虚無の剣「音無しの構え」とは何か?

机竜之助を象徴するのが、彼の使う魔剣「音無しの構え」です。これは単なる剣術の型ではなく、彼の精神性そのものを表しています。

「音無しの構え」の最大の特徴は、竹刀や木剣が打ち合う音を一切立てさせずに相手を制圧する点にあります。作中では以下のように説明されています。

一足一刀の青眼に構えたまま、我が刀に相手の刀をちっとも触らせず、二寸三寸と離れて、敵の出る頭、出る頭を、或いは打ち、或いは突く、自流他流と敵の強弱に拘らず、机竜之助が相手に向う筆法はいつでもこれで、一試合のうち一度も竹刀の音を立てさせないで終ることもあります。

相手の動きを完璧に読み切り、攻撃が発動するまさにその瞬間を捉えて打ち倒す。これは神業に近い技術であると同時に、相手との対話や魂のぶつかり合いを一切拒絶する、冷酷で虚無的な剣といえます。竜之助がなぜこのような剣技を身につけたのかは語られませんが、彼の人間関係を拒絶し、内にこもる性格がこの魔剣を生み出したのかもしれません。

物語はなぜ未完のまま終わったのか

物語はなぜ未完のまま終わったのか

『大菩薩峠』について語る上で、避けては通れないのが、この物語が未完であるという事実です。

結論から言うと、作者である中里介山の死去によって、物語は完結しなかったのです。

『大菩薩峠』の連載は、1913年(大正2年)から始まり、新聞や雑誌を変えながら1941年(昭和16年)まで、実に足掛け約30年にも及びました。物語は幕末の動乱を描きながらも、途中からは史実の明治維新を無視して、登場人物たちがそれぞれの理想や業を背負って日本各地、さらには海外の無人島へと彷徨い続けるという壮大なパラレルワールドへと突入していきます。

結末はありません

物語は主要な登場人物たちがそれぞれの道を歩み始めたところでぷつりと途絶えており、机竜之助の運命や宇津木兵馬の仇討ちがどうなったのかなど、多くの謎は解決されないままです。読者は壮大な物語の結末を、自らの想像に委ねるしかありません。

作者の死により物語は永遠に終わりを告げましたが、この「未完であること」自体が、登場人物たちの果てしない業と流転の旅を象徴しているかのようで、かえって作品の魅力を深めているともいわれています。

大菩薩峠の小説のあらすじ以外の魅力と情報

大菩薩峠の小説のあらすじ以外の魅力と情報
  • 大衆を熱狂させた本作の見どころを紹介
  • 作中に登場する数々の有名な日本刀
  • 100年読み継がれる作品の読者の感想
  • 作者・中里介山の人物像と執筆背景
  • 青空文庫で全巻無料で読むことは可能か

大衆を熱狂させた本作の見どころを紹介

『大菩薩峠』は非常に長大で、時に難解な部分もありますが、多くの読者を熱狂させた圧倒的な魅力を持っています。ここでは、その見どころをいくつかご紹介します。

『大菩薩峠』の主な見どころ

  • 読みやすいエンタメ性:本作は難解な純文学ではなく、大衆に楽しまれることを目指した「大衆小説」です。講談調の軽快な文体で書かれているため、古典でありながら意外なほどサクサクと読み進めることができます。
  • 魅力的な登場人物:前述の通り、主人公の机竜之助をはじめ、登場人物たちのキャラクターが非常に濃く、一度読んだら忘れられません。善人、悪人、庶民に至るまで、生き生きとした人間像が描かれています。
  • ジャンルを越えた展開:物語は単なる時代劇に留まりません。仇討ち物語から始まり、群像劇、愛憎劇、ミステリー、果てはファンタジーやホラーのような要素まで現れる「なんでもあり」の展開が読者を飽きさせません。
  • 圧倒的な読後感:未完ではあるものの、この長大な物語を読み切った時の達成感は格別です。読書家を自負するなら一度は挑戦してみたい作品といえるでしょう。

作中に登場する数々の有名な日本刀

作中に登場する数々の有名な日本刀

剣豪小説である本作には、実在の銘を持つ数多くの日本刀が登場し、物語にリアリティと彩りを加えています。刀剣ファンにとっては見逃せないポイントです。

作中に登場する主な銘刀

  • 藤四郎(粟田口吉光)の短刀:机家の家宝でしたが、盗賊・裏宿の七兵衛に盗まれ、お松の守り刀となります。
  • 武蔵太郎安国:机竜之助が物語冒頭から愛用する刀。大菩薩峠での辻斬りにもこの刀が使われました。
  • 月山(月山丸):竜之助が三輪の植田丹後守から餞別として与えられた刀です。
  • 主水正正清:薩摩の剣客・田中新兵衛が持つ長刀として登場します。
  • 伯耆の安綱:悪徳旗本・神尾主膳が策略によって手に入れる名刀です。

これらの刀が誰の手に渡り、どのように物語に関わっていくのかを追うのも、本作の楽しみ方の一つです。

100年読み継がれる作品の読者の感想

100年読み継がれる作品の読者の感想

1世紀以上にわたって読み継がれてきた『大菩薩峠』には、賞賛から戸惑いの声まで、実に様々な感想が寄せられています。

とにかく面白いの一言。主人公が悪逆非道なのに、なぜか惹きつけられてしまう。どんどん話が大きくなっていくスケール感は、現代の漫画やアニメにも通じるものがあるね。

長くて途中で挫折しそうになりました。場面が頻繁に変わるし、登場人物も増えるので混乱することも…。でも、文章自体は読みやすいので、気長に付き合う覚悟があれば楽しめます。

多くの読者が指摘するのは、その圧倒的な物語の面白さと、竜之助というダークヒーローの魅力です。一方で、物語のまとまりのなさや、頻繁な視点の移動に戸惑う声も少なくありません。善悪がはっきりしない主人公の行動に、感情移入しきれないという感想も見られます。しかし、谷崎潤一郎や芥川龍之介といった文豪たちも愛読したと言われており、その文学的価値と娯楽性の高さは折り紙付きです。

作者・中里介山の人物像と執筆背景

この壮大な物語を生み出した作者・中里介山(なかざと かいざん)は、一体どのような人物だったのでしょうか。

介山は1885年、現在の東京都羽村市に生まれました。若い頃は社会主義に傾倒していましたが、幸徳秋水らが処刑された大逆事件に衝撃を受け、次第にキリスト教や仏教思想、特に「大乗仏教」に深く惹かれていきます。彼は自らの小説を「大乗小説」と称し、人間界のあらゆる事象を描ききることで、仏教的な悟りの境地を表現しようとしました。

『大菩薩峠』は、まさにこの「大乗小説」の理念を体現した作品です。善悪を超越した主人公・竜之助の流転の旅は、人間の「業」そのものを象徴しているかのようです。また、満州国建国に理想を抱いては失望し、農本主義に傾倒するなど、作者自身の思想の変遷が、物語後期のユートピア建設や農耕生活といったテーマに色濃く反映されています。この巨大な物語は、中里介山という一人の思想家の、生涯をかけた魂の遍歴の記録でもあったのです。

青空文庫で全巻無料で読むことは可能か

青空文庫で全巻無料で読むことは可能か

「これほどの大作、一度読んでみたいけれど、全巻揃えるのは大変そう…」と感じる方も多いはずです。しかし、ご安心ください。

結論として、『大菩薩峠』は「青空文庫」で全巻無料で読むことが可能です。

青空文庫は、著作権の保護期間が満了した作品などを公開しているインターネット上の電子図書館です。作者の中里介山は1944年に亡くなっており、著作権の保護期間は満了しています。そのため、誰でも合法的に、無料でこの大長編を読むことができます。

青空文庫で『大菩薩峠』に挑戦しよう

全41巻にのぼる長大な物語ですが、スマートフォンやタブレット、PCがあれば、いつでもどこでも自分のペースで読み進めることができます。まずは冒頭の「甲源一刀流の巻」だけでも読んでみて、その独特の世界観に触れてみてはいかがでしょうか。

(参照:青空文庫『大菩薩峠』)

大菩薩峠の小説あらすじを総括

今回の記事の内容をまとめます。

  • 『大菩薩峠』は中里介山による未完の長編時代小説
  • 虚無の剣士・机竜之助を主人公に幕末の動乱を描く
  • 物語は竜之助が理由もなく老人を辻斬りにするところから始まる
  • 彼の使う「音無しの構え」は相手に刀を触れさせず倒す魔剣
  • 竜之助に運命を狂わされた人々の群像劇でもある
  • 宇津木兵馬は兄の仇として竜之助を追い続ける
  • 物語は30年近く連載されたが作者の死により未完に終わった
  • 机竜之助のモデルは北一輝であるという説もある
  • 大衆小説として読みやすくエンターテイメント性が高い
  • 作中には実在の銘を持つ日本刀が多数登場する
  • 著作権保護期間が満了し青空文庫で全巻無料で読める
  • ダークヒーロー小説の原点として後世に大きな影響を与えた
タイトルとURLをコピーしました