『踊れ、愛より痛いほうへ』のあらすじは?芥川賞候補作を解説

『踊れ、愛より痛いほうへ』のあらすじは?芥川賞候補作を解説 あらすじ・要約

芥川賞の候補として注目を集めている向坂くじらさんの最新作『踊れ、愛より痛いほうへ』。前作『いなくなくならなくならないで』に続き、2作連続でのノミネートとなり、その才能に多くの期待が寄せられています。

この記事を読まれているあなたは、話題の新作が一体どんな内容で、どのようなあらすじなのか、また、文学界で高く評価される見どころはどこにあるのか、気になっているのではないでしょうか。あわせて、才能あふれる作者がどのような人物なのかも知りたいかもしれません。

この記事では、第173回芥川賞候補作『踊れ、愛より痛いほうへ』について、読者の皆さまが知りたい情報を網羅的に解説します。

この記事で分かること

  • 芥川賞候補作『踊れ、愛より痛いほうへ』の詳しいあらすじ
  • 作者・向坂くじら氏の経歴とこれまでの作品
  • 物語の核心に迫る読みどころと文学的な評価
  • 第173回芥川賞の選考日程と書籍の基本情報

『踊れ、愛より痛いほうへ』のあらすじを解説

『踊れ、愛より痛いほうへ』のあらすじを解説
イメージ作成:あらすじブックマーク
  • どんな内容?物語のあらすじを紹介
  • 作者・向坂くじらとはどんな人物?

どんな内容?物語のあらすじを紹介

それでは、『踊れ、愛より痛いほうへ』がどのような物語なのか、そのあらすじを詳しく見ていきましょう。

この物語の主人公は、アンノという名の少女です。彼女は幼い頃から、納得のいかない出来事に遭遇すると、まるで「頭が割れてしまう」かのような、胸が張り裂けるほどの強い衝動に駆られる特性を持っていました。

物語が大きく動き出すのは、アンノが高校生になったある日のことです。彼女は、かつて母親のお腹にいたはずの「妹」が、実は自分の存在が原因で「いなくなった」という衝撃的な事実を知ってしまいます。この出来事はアンノの心を激しく揺さぶり、これまで信じてきた家族や恋愛といった、あらゆる人間関係のあり方に深い疑念を抱かせるきっかけとなりました。

自分自身を守るため、そして既存の「家庭」という枠組みから逃れるため、アンノは家を出ることを決意します。しかし、彼女が選んだ新たな住処は、遠く離れた場所ではなく、なんと自宅の庭に張った一つの赤いテントでした。

血縁という抗いがたい繋がりに縛られず、社会が押し付ける愛の形を拒絶したアンノ。彼女は庭のテントという「家ならざる家」を拠点に、自らの感情と向き合いながら、自分だけの生き方を模索し始めます。この物語は、アンノが「割れる」瞬間とどう対峙し、痛みを乗り越えていくのかを、予測不能な展開で描く、新しいかたちの愛の物語です。

作者・向坂くじらとはどんな人物?

まず、本作の作者である向坂くじら氏についてご紹介します。向坂氏は、詩人、小説家、そしてエッセイストとして、ジャンルを越えて多彩な活動を展開している新進気鋭の作家です。

1994年に愛知県名古屋市で生まれ、慶應義塾大学文学部を卒業しました。大学在学中から詩作を始め、卒業後は詩の朗読とエレキギターを組み合わせたユニット「Anti-Trench」を結成するなど、独自の表現活動を続けています。

大きな転機となったのは、2024年に発表した初の小説『いなくなくならなくならないで』です。この作品が第171回芥川賞の候補に選ばれたことで、小説家としての名が一躍知れ渡りました。そして、今回ご紹介する『踊れ、愛より痛いほうへ』で2作連続の芥川賞候補となり、現代文学の新たな旗手として確固たる地位を築きつつあります。

また、埼玉県で小中高生を対象とした「国語教室 ことぱ舎」を主宰するというユニークな一面も持っています。言葉と向き合う教育現場での経験が、その豊かな作風に影響を与えているのかもしれません。

『踊れ、愛より痛いほうへ』のあらすじと芥川賞

『踊れ、愛より痛いほうへ』のあらすじと芥川賞
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  • 芥川賞候補としての見どころ
  • 『踊れ、愛より痛いほうへ』あらすじと芥川賞まとめ

芥川賞候補としての見どころ

本作がなぜこれほどまでに注目され、芥川賞の候補として高く評価されているのでしょうか。その見どころは、主に二つの点にあると考えられます。

一つ目は、主人公アンノの鮮烈な個性と、その内面から湧き上がる衝動的なエネルギーです。理不尽なことに直面した際に「スルーできない」彼女の真っ直ぐな感性は、読者の感情を強く揺さぶります。特に、家族の秘密と対峙し、自らの居場所を求めて疾走する姿には、痛々しくも力強いドライブ感があふれています。詩人でもある向坂氏ならではの、鋭利でありながら温かみのある言葉選びが、アンノの内面の葛藤を詩情豊かに描き出している点も魅力です。

二つ目の見どころは、血縁や既存の家族観に依拠しない、新しい愛のかたちを大胆に提示している点です。選考委員の渡邊英理氏は本作を「血縁に依拠しない家ならざる家にこそ、愛の呪縛の彼方がほの見える。この小説は、別の形の愛を求めるあなたへの過激な恋文だ」と評しています。

庭のテントという象徴的な空間で、アンノが築こうとする「家ならざる家」は、私たちに「家族とは何か」「愛とは何か」という根源的な問いを投げかけます。単なる青春小説や家族小説というジャンルには収まりきらない、その過激で哲学的な問いかけこそが、本作が文学的に高く評価される理由と言えるでしょう。

『踊れ、愛より痛いほうへ』あらすじと芥川賞の総括

この記事で解説してきた『踊れ、愛より痛いほうへ』に関する情報を、最後に要点としてまとめます。

  • 向坂くじらの2作目となる最新小説
  • 第173回芥川龍之介賞の候補作に選出
  • 前作に続き2作連続での芥川賞ノミネート
  • 主人公は納得できないことがあると「割れる」感覚を持つ少女アンノ
  • かつて母のお腹にいた妹が自分のせいでいなくなったと知る
  • この事実をきっかけに家族や恋愛への疑念を抱く
  • 高校生になったアンノは家の庭にテントを張って暮らし始める
  • 血縁に縛られない「家ならざる家」で新しい愛のかたちを模索する物語
  • 作者の向坂くじら氏は詩人やエッセイストとしても活躍
  • 国語教室「ことぱ舎」を主宰するユニークな経歴も持つ
  • 選考委員からは「別の形の愛を求めるあなたへの過激な恋文」と高く評価される
  • アンノの「スルーできない」真っ直ぐな感性と疾走感が大きな魅力
  • 詩人ならではの鋭利で美しい文章表現も読みどころの一つ
  • 書籍は2025年6月24日に河出書房新社から発売予定
  • 第173回芥川賞の選考会は2025年7月16日に開催される
  • 現代の家族観や愛のあり方について深く考えさせられる一冊
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