こんにちは。あらすじブックマーク、管理人の「おうみ」です。
山尾悠子さんの『ラピスラズリ』、気になっている方も多いのではないでしょうか。「小説のあらすじを知りたいけれど、難解そうで手が出しにくい」「読んだけど解釈が難しくて意味がよくわからなかった」といった悩みを持つ方もいるかもしれませんね。独特な幻想世界や美しい文章で知られる本作ですが、少し予備知識があるだけで、その迷宮のような物語をより深く楽しめるようになりますよ。
この記事では、各短編のあらすじや感想、謎めいた設定の考察などをわかりやすくまとめてみました。
- 5つの連作短編それぞれのあらすじと物語のつながり
- 物語の鍵となる「冬眠者」や「ゴースト」の正体や考察
- 山尾悠子さんの美しい文章や作品世界を楽しむポイント
- 実際に読んだ方の評価や、本作を入手する方法
「ラピスラズリ」小説のあらすじと世界観

『ラピスラズリ』は、冬の間眠り続ける「冬眠者」という不思議な種族を軸にした連作短編集です。ここでは、収録されている各物語のあらすじや、物語を彩る独特なキャラクター、そして難解と言われる世界観の考察について詳しく解説していきます。
各短編のあらすじを解説
この作品は5つの短編から構成されていますが、それぞれが独立しているようでいて、実は見えない糸で繋がっているのが特徴です。それぞれのあらすじを簡単にご紹介しますね。
1. 銅板
物語の入り口となるプロローグ的なお話です。旅の途中、列車の乗り継ぎ待ちで見知らぬ街に降り立った「わたし」は、深夜営業の画廊に入ります。そこで店主から、ある小説の挿絵として描かれたという3枚の銅版画を見せられます。その絵には「冬眠者」たちの姿が描かれており、不気味で魅力的な物語の世界へと読者を誘います。
2. 閑日(かんじつ)
舞台は、とある広大な屋敷。ここでは主である一族が冬の間ずっと眠り続ける「冬眠」の習慣を持っています。しかしある年の冬、一人の「小娘」が予定外に目覚めてしまいます。彼女は誰もいないはずの屋敷で、定めを忘れてしまった「ゴースト」と出会い、奇妙な交流を深めていくことになります。静謐な冬の空気が美しい一編です。
3. 竈(かまど)の秋
こちらは「閑日」の前日譚とも言える物語で、冬眠者たちが眠りにつく直前の秋の様子が描かれています。屋敷の棟開きの日、人形を届けに来た荷運びや、冬支度に追われる使用人たち、そして不穏な空気を漂わせる冬眠者たちが入り乱れます。雨が降り続き、疫病が流行り、借金取りまで現れるという、崩壊の予兆に満ちた群像劇です。
4. トビアス
これまでの西洋風な屋敷とは打って変わり、舞台は近未来あるいは終末後の日本のような世界へ。インフラが崩壊しかけた世界で、冬眠者の末裔と思われる主人公たちがひっそりと暮らしています。タイトルの「トビアス」は、主人公が飼っていた犬の名前。内と外、生と死の境界が曖昧になる中で、切ない逃避行が描かれます。
5. 青金石(ラピスラズリ)
物語は時代を大きく遡り、13世紀のイタリアへ。死を目前にした聖フランチェスコのもとを、一人の青年が訪れます。彼は冬眠者であり、それゆえに呪われた存在として扱われていました。しかし、彼は目覚めの時に見た「天使」について語ります。物語の始まりと終わりをつなぐ、美しく荘厳なエピローグです。
物語の主要な登場人物

この小説には、一般的な「主人公」という概念が少し希薄かもしれません。その代わり、象徴的な役割を持つキャラクターたちが登場します。
- 小娘(閑日):冬眠者の一族の少女。冬の間にたった一人目覚めてしまい、空腹と孤独の中でゴーストと出会います。
- ゴースト:屋敷を彷徨う幽霊のような存在。生前の記憶や定めを忘れてしまっていますが、物語の重要な鍵を握っています。
- ラウダータ(竈の秋):冬眠者一族の娘。気位が高く、使用人たちに対して冷徹な態度をとります。
- 双子の老女(竈の秋):マルタとグレタ。一族の長老的な存在ですが、どこか不気味な雰囲気を醸し出しています。
- 使用人たち:冬眠しない人間たち。主人が眠っている間、屋敷を管理しますが、中には反乱を企てる者や不穏な動きを見せる者もいます。
- トビー(トビアス):主人公の愛犬。物語の中で悲しい運命を辿りますが、重要なモチーフとして描かれます。
- 聖フランチェスコ(青金石):実在の聖人。物語全体のテーマである「再生」や「救済」を象徴する存在として登場します。
鍵となる冬眠者とゴースト
本作を読み解く上で絶対に外せないのが、「冬眠者」と「ゴースト」という存在です。
まず「冬眠者」ですが、彼らは単に寒さが苦手で寝ているわけではありません。作中では、彼らは秋になると栄養を蓄え、冬の間は石のように冷たくなって眠り続ける宿命を持った種族として描かれています。彼らは貴族のように屋敷に住んでいますが、その生活は使用人たちの労働によって支えられています。眠っている間は無防備であり、ある意味で使用人たちに生殺与奪の権を握られているとも言える危うい存在なんですね。
一方の「ゴースト」は、単なる幽霊とは少し違います。「閑日」では、小娘とゴーストが会話をするシーンがありますが、ゴーストは自分が何者で、なぜそこにいるのかを忘れています。彼らは屋敷の「影」のような存在であり、冬眠者たちの歴史や、隠された過去の悲劇を体現しているようにも見えます。
面白い考察として、冬眠者が死ぬとゴーストになり、ゴーストが自らの役割(定め)を終えると光となって昇天する、という「循環」のサイクルがあるのではないか、という見方もあります。
幻想的な世界観の見どころ

『ラピスラズリ』の最大の魅力は、なんといってもその圧倒的な文章の美しさにあります。
山尾悠子さんの文章は「硬質」と表現されることが多いですが、それは冷たいという意味ではなく、宝石のように研ぎ澄まされているということです。例えば、冬の静寂の描写や、屋敷の薄暗い廊下の空気感、人形たちの不気味な静けさなどが、まるで目の前に浮かぶような緻密さで描かれています。
また、世界観も非常に独特です。ゴシック・ホラーのような洋館が舞台かと思えば、急に日本の終末風景になったり、中世イタリアに飛んだりと、時空を超えてイメージが連鎖していきます。理屈で理解しようとするよりも、美しい画集をパラパラとめくるように、イメージの奔流に身を任せて読むのがおすすめの楽しみ方かなと思います。
難解な物語の解釈と考察
正直なところ、この物語を一回読んだだけですべて理解するのはかなり難しいです(私も最初は頭が「?」でいっぱいになりました)。しかし、いくつかのヒントを知っておくと、物語の深層が見えてきます。
一つの有力な解釈は、この物語が「支配と被支配の逆転」そして「死と再生の循環」を描いているというものです。「竈の秋」では、使用人たちの不穏な動きが描かれますが、これはかつて使用人だった者たちが反乱を起こし、主である冬眠者たちを森に捨てて成り代わった、という過去(あるいは未来)を暗示しているとも読めます。
森を彷徨う「森の住人」たちは、実はかつて屋敷を追放された元・主人たちなのかもしれません。そう考えると、屋敷の主と使用人が長い時間をかけて入れ替わり続けているという、恐ろしくも壮大な歴史が見えてきます。
また、タイトルの「ラピスラズリ(青金石)」は、聖なる色、あるいは夜空や宇宙を象徴しています。絶望的な状況の中で、ふと見上げればそこにある美しい青。それは、たとえ滅びゆく運命であっても、そこには救いや再生の光があることを示唆しているようにも感じられますね。
小説ラピスラズリのあらすじと評価

ここからは、実際にこの作品を読んだ読者の方々の反応や、作者である山尾悠子さん自身の魅力、そして本の仕様などについてご紹介します。
読者の感想やレビューまとめ
ネット上の感想やレビューを見てみると、評価は見事に二分されている印象ですね。
肯定的な意見
- 「日本語ってこんなに美しいんだと感動した」
- 「意味はわからなくても、夢を見ているような心地よさがある」
- 「耽美的でゴシックな世界観がたまらない」
- 「何度読んでも新しい発見があるスルメのような小説」
戸惑いの意見
- 「話が難解すぎてついていけなかった」
- 「時系列がバラバラで混乱する」
- 「ストーリーの起承転結を求める人には向かないかも」
「わからないけれど凄い」という感想が非常に多いのが特徴です。ストーリー重視でスカッとしたい方よりは、雰囲気や文章そのものを味わいたい方に強く支持されている作品だと言えます。
作者山尾悠子のプロフィール
著者の山尾悠子(やまお ゆうこ)さんは、1955年生まれ、岡山県出身の作家さんです。彼女の経歴は少し変わっていて、1970年代に鮮烈なデビューを果たした後、なんと約20年もの間、執筆活動を休止して沈黙を守っていた時期があります。
この『ラピスラズリ』は、そんな長い沈黙を破って発表された復帰後の第一作目の長編(連作短編)です。そのため、ファンにとっては待望の作品であり、伝説の作家の復活を告げる記念碑的な一冊でもあるんです。現在では『飛ぶ孔雀』などの作品で多くの賞を受賞し、再評価の波が高まっています。
山尾悠子の作品の特徴は?

山尾作品の最大の特徴は、やはりその「幻想性」と「構築美」でしょう。現実の法則が通用しない夢のような世界を、非常に論理的かつ緻密な文章で構築します。
彼女の作品はよく「硬質な文体」と評されます。感情に流されることなく、見たもの、感じたものを正確に言葉に置き換えていくようなスタイルです。そのため、読者は文字を読んでいるはずなのに、まるで精巧な建築物や絵画を見ているような感覚に陥ります。日本の幻想文学の系譜にありながら、どこか無国籍で時代不詳な雰囲気を持っているのも、山尾作品ならではの魅力ですね。
美しい装丁と本の魅力
『ラピスラズリ』は、その「本」という物体としての美しさも話題になります。
特に国書刊行会から出版された単行本版は、函入りで、パラフィン紙に包まれた布張りの表紙、箔押しのタイトルなど、工芸品のようなこだわりで作られています。持っているだけで幸せになれるような本ですね。
現在主に入手しやすいのは「ちくま文庫」版ですが、こちらも表紙の絵画が非常に美しく、作品の雰囲気をよく表しています。電子書籍でも読めますが、個人的にはこの作品に関しては、紙の本で手元に置いておきたくなる一冊かなと思います。
本作はどこで読めるのか
現在、『ラピスラズリ』は以下の形態で読むことができます。
- ちくま文庫:最も入手しやすく、価格もお手頃です。解説も充実しているので、初めて読む方には特におすすめです。
- 国書刊行会(単行本):古書店や図書館などで探す必要がありますが、装丁にこだわりたい方はぜひ探してみてください。
- 電子書籍(Kindleなど):場所を取らずにすぐに読みたい方には便利です。
ちなみに、ちくま文庫版には「補筆改訂」が施されています。著者が納得いくまで手を入れた完成形と言えるかもしれませんね。
小説ラピスラズリのあらすじまとめ

今回は、山尾悠子さんの小説『ラピスラズリ』について、あらすじや見どころ、少し踏み込んだ解釈までご紹介しました。
冬眠者とゴースト、繰り返される季節と運命。一見すると難解なパズルのような物語ですが、その奥には「死と再生」という普遍的なテーマが流れています。何より、日本語とは思えないほど美しい文章の響きは、一度味わうと癖になる中毒性があります。
「ラピスラズリ 小説 あらすじ」と検索してこの記事にたどり着いたあなたも、ぜひ一度、この幻想的な迷宮に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。きっと、忘れられない読書体験になるはずです。


