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『さよならジャバウォック』のあらすじ解説!伊坂幸太郎の傑作

『さよならジャバウォック』のあらすじ解説!伊坂幸太郎の傑作 あらすじ・要約
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木目のテーブルに置かれた青と黒のアートカバーの書籍。奥には湯気の立つコーヒーカップと開かれたノート、万年筆、眼鏡がある。

こんにちは。あらすじブックマーク、管理人の「おうみ」です。

伊坂幸太郎さんの『さよならジャバウォック』のあらすじを探して、ここにたどり着いたんですね。本作、伊坂さんのデビュー25周年記念作品ということで、発売前からかなり話題になっていました。

私自身、伊坂幸太郎さんの作品はデビュー以来追いかけてきましたが、本作は「ミステリーの勝負作」とご本人が語るだけあって、その気合の入り方が違います。サスペンス、SF、そして家族愛。伊坂ワールドの魅力がこれでもかと詰め込まれています。

この記事では、そんな伊坂幸太郎さん版『さよならジャバウォック』に絞って、物語の導入部のあらすじをネタバレなしで紹介しつつ、作品の魅力や考察ポイント、読者の評価まで、気になる情報をギュッとまとめてお届けしますね。

この記事で分かること
  • 本作の基本的なあらすじ(ネタバレなし)
  • 物語の鍵を握る主要な登場人物たち
  • タイトルの意味や作品の考察ポイント
  • 読者のリアルな感想や結末に関するヒント
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さよならジャバウォックのあらすじ(ネタバレなし)

まずは物語の入り口、核心的なネタバレを含まない範囲で『さよならジャバウォック』の基本情報とあらすじを紹介します。この導入部だけでも、一気に引き込まれること間違いなしですよ。

本作のジャンルは「長編ミステリー」とされていますが、その一言では収まらない、伊坂さんらしいジャンル横断的な魅力に満ちています。

伊坂幸太郎のデビュー25周年記念作

薄暗い浴室で、床に倒れている男性の傍らで絶望した表情で座り込んでいる日本人女性。

本作『さよならジャバウォック』は、伊坂幸太郎さんのデビュー25周年を記念して書き下ろされた長編ミステリーです(2025年10月22日発売、双葉社、338ページ)。

伊坂さんはインタビューで、「自分はミステリー作家だと思われていないのではないか」という長年の不安があったと語っています。「読者がはっとする驚き、反転があればミステリー」という信念のもと、改めてその原点と向き合った「勝負作」なんですね。

この「勝負」がどれほど本気だったか。それは、あの『十角館の殺人』などで知られる本格ミステリーの巨匠・綾辻行人さんが、本作に寄せたコメントからも伝わってきます。

「ここまでの驚きを味わうのは久しぶりだった」「これぞミステリーの(あえて「本格ミステリーの」とも云ってみよう)、最高の醍醐味である」とまで絶賛されているんです。これはミステリーファンならずとも期待が高まりますよね。

物語の導入部のあらすじ

物語は、これ以上ないほどの緊迫感とともに幕を開けます。

主人公・量子(りょうこ)は、ある日、自宅マンションの浴室で夫が倒れているのを発見します。彼女が目にしたのは、紛れもない「死」。そして彼女は即座にこう認識します。

「夫は死んだ、死んでいる。私が殺したのだ。」

彼女の夫は、結婚直後の妊娠と転勤をきっかけに、別人のように冷酷な性格に変貌していました。量子は彼からの執拗な暴言に耐え、息子の翔(しょう)を必死に育ててきましたが、ついに暴力をふるわれるまでに至っていたのです。

「私が殺した」という認識。そして、息子の翔が幼稚園から帰ってくる時間が刻一刻と迫る焦燥感。まさに絶体絶命の状況です。

主人公・量子と謎の後輩・桂凍朗

玄関の開いたドアの前に立ち、不安そうな表情を浮かべる日本人女性と、その隣に立つ冷静な表情の日本人男性。

量子が途方に暮れ、時間が止まったかのように感じていた、まさにその時。玄関のチャイムが鳴り響きます。

そこに立っていたのは、桂凍朗(かつら こごろう)。2週間前に近所で偶然再会したばかりの、大学時代のサークルの後輩でした。

彼は、まるで室内の惨状をすべて見透かしているかのように、冷静に、しかし有無を言わせぬ口調でこう告げます。

「量子さん、問題が起きていますよね? 中に入れてください」

なぜ彼はこのタイミングで? なぜ彼は「問題」が起きていることを知っているのか?

「DV夫を殺害した妻」という閉鎖的なサスペンスかと思いきや、この桂凍朗という謎の人物の不可解な登場によって、物語は一気に予測不可能な領域へと突入します。「死体遺棄」や「自首」といったありきたりの展開を裏切り、読者は「一体、今、何が起きているのか? (What-dunnit)」という、より根源的なミステリーの渦に引き込まれていくのです。

導き手となる破魔矢と絵馬

物語は、この桂凍朗との不可解なやり取りの後、さらなる謎の人物たちを登場させます。

それが、破魔矢(はまや)絵馬(えま)という、なんとも縁起の良い、神道的な名前を持つ二人組の男女です。

彼らは、混乱する量子の前に現れ、彼女を導く役割を担います。伊坂幸太郎作品に特徴的な、軽妙な会話を繰り広げる「バディ」であり、読者レビューでも「素敵な夫婦」と評されています。

しかし、彼らは一体何者なのか? その名前が象徴するように、この物語における「厄災(=ジャバウォック)」を祓う者たちなのでしょうか。彼らの目的もまた、序盤の大きな謎として物語を牽引します。

もう一つの視点:北斎と斗真

夜のレコーディングスタジオで、ギターを弾く長髪の日本人男性と、ミキシングコンソールを操作する別の日本人男性。

『さよならジャバウォック』が巧みなのは、主人公・量子の視点(一人称、あるいは彼女に近い視点)だけで物語が進まない点です。

並行して、元ミュージシャンの北斎(ほくさい)と、そのマネージャーである斗真(とうま)のサブプロットが、量子とは完全に独立した形で描かれます。

著者インタビューによれば、このパートは「量子のパートだけでは躍動感がない」という理由から後で追加されたものだそうです。しかし、この一見無関係に見えるサブプロットが、最終的に「音楽」という伊坂作品にとって非常に重要なテーマを通じて本筋と合流する時、物語は多層的な深みとカタルシスを獲得します。

この二つの物語が、いつ、どこで交差するのか。それも本作を読む上での大きな楽しみの一つですね。

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さよならジャバウォックのあらすじ以外の魅力

あらすじを知ると、今度はその裏にある設定や考察が気になってきますよね。ここでは、物語をさらに深く楽しむためのキーワードや、読者のリアルな評価を紹介します。このセクションでは、作品の核心に触れる「設定」について言及しますが、結末のネタバレはありませんのでご安心ください。

ジャバウォックとは何を意味する?

スマートフォンを操作する群衆の上空に、赤い目を持つ巨大で不気味な怪物が浮かんでいる。怪物は闇と触手で構成され、都市のスカイラインを背景にしている。

まず、最も気になるのがこの『さよならジャバウォック』という不思議なタイトルでしょう。

「ジャバウォック(Jabberwock)」とは、もともとルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』に登場する、意味不明な言葉で綴られた詩(ジャバウォックの詩)に出てくる怪物の名前です。

作中において「ジャバウォック」は、単なる怪物ではなく、もっと厄介な「現象」や「存在」として描かれます。

人間に「取り憑く」(憑依する)ことで、その人物の精神を支配し、凶暴性や攻撃性を著しく増幅させる、未知の何か。

さらに恐ろしいのは、ジャバウォックに取り憑かれた宿主(人間)が死亡すると、その場にいる最も近くの別の人間に「乗り移る」(伝染する)という性質です。

この設定は、個人の悪意というよりも、「集団的な狂気」や「制御不能な攻撃衝動」のメタファーとして非常に秀逸です。読者レビューでも、この現象が「SNSの炎上における、匿名の加害性や集団心理と酷似している」という指摘が多く見られ、非常に現代的なテーマを扱っていることが分かります。

量子の名前に隠された考察

主人公・量子(りょうこ)の名前も、単なる偶然ではありません。これはこの物語の構造そのものを示す、最大のヒントになっています。

彼女の名前は、物理学の「量子(りょうし)力学」を強く連想させます。

量子力学の世界では、「観測されるまで、その状態は確定しない」という不思議な「重ね合わせ」の状態が存在します。(有名な「シュレーディンガーの猫」の思考実験がこれですね)

本作の主人公・量子もまた、「記憶と現実のズレ」に悩み、心が波のように揺らぐ、非常に不安定な知覚の持ち主として描かれます。彼女の「信頼できない語り」こそが、読者を巧みに欺く最大のトリックの基盤となっているのです。

物語全体が、この「量子」の重ね合わせ状態(=記憶の混乱)という「箱」を、ある「観測者」が「観測」することで、いかにして一つの「現実」に収束させるか、というプロセスを描いたものだと言えます。このSF的なギミックとミステリーの融合は、まさに圧巻です。

こうした「信頼できない語り手」の手法は、ミステリーにおいて重要なトリックの一つです。

謎の「亀」が持つ役割とは

和室の畳の上に置かれた大きな亀。その甲羅からは紫色の不気味な煙が立ち上っている。亀の赤い目はこちらを見つめており、その後ろには驚いた表情の日本人女性と冷静な表情の日本人男性が立っている。

さて、こんなにも恐ろしい「ジャバウォック」ですが、作中では意外な方法で無害化(回収・封じ込め)できることが判明します。

それが、なんと「亀(かめ)」です。

ジャバウォックは、人間から「亀」に乗り移らせることができるのです。作中では「なぜ亀なのか」という明確な理由は説明されていません。しかし、ここに象徴的な解釈が可能です。

私なりの考察ですが、ジャバウォックという「人間の高度で複雑な悪意」や「SNSの炎上のようなどす黒い攻撃衝動」は、それを受け止め、増幅させてしまうための「人間の複雑な脳(精神)」を必要とするのではないでしょうか。

対して、一般的に「平穏」や「忍耐」の象徴であり、単純な思考(本能)で生きる「亀」は、その悪意を増幅させるための器として不適格です。亀という「単純な器」の中では、ジャバウォックは機能不全に陥り、無力化されてしまう……。

恐ろしい脅威が、「亀」という、ある種の「間の抜けた」コミカルなアイテムによって解決されるという皮肉(ユーモア)こそが、シリアスな題材の中にも軽やかさを忘れない伊坂作品らしさの真骨頂だと感じました。

読者の感想・評価・口コミまとめ

この作品、その特異な構造から、読者の評価は「絶賛」と「戸惑い」が入り混じる、非常に興味深いものになっています。

「ミステリーの勝負作」と聞いて読み始めた読者と、「いつもの伊坂ワールド」を期待した読者とで、受け取り方が少し異なるようです。

評価ポイント称賛賛否
ストーリー展開「導入からは想像もつかない結末に連れて行かれる」「ジェットコースター度では随一」「買ったその日に一気読みした」「中盤から非現実的すぎて戸惑った」「SFファンタジー的な伊坂ワールド」
トリックと伏線「伏線が散りばめられ、最後の種明かしで『そういうことか!』となった」「破魔矢の正体には衝撃と感動で泣いた」(特になし。トリックの鮮やかさや伏線回収は高く評価されている)
テーマと設定「『セミンゴ』を思い出す攻めた題材で面白い」「SNSの炎上などタイムリーなモチーフ」「音楽が暴力に対抗するという伊坂氏らしいテーマ」「『ミステリー』として期待すると少し残念」「これはミステリーではない(SFだ)」

この「評価のねじれ」こそが、本作のアイデンティティを解き明かす鍵となります。

  • 著者は「ミステリー」を書こうとした。
  • 綾辻行人は「これぞミステリー」と評した。
  • しかし、一部の読者は「ミステリーではない(SFだ)」と感じた。

本作は、「犯人は誰か (Who-dunnit)」ではなく、一貫して「何が起きているのか (What-dunnit)」を問うミステリーです。その「答え」が、SF的な「ジャバウォック」という存在と「時間トリック」であるため、旧来のミステリー(特に犯人当て)を期待した読者は戸惑いを覚えるわけですね。

しかし、提示された全ての謎が、その作品世界の中ではロジカルに氷解し、読者の認識(リアリティ)そのものを反転させるという意味において、本作はまぎれもなく「本格ミステリーの醍醐味」を持つ作品だと私は思います。

結末と最後は?(ネタバレ配慮)

あらすじを検索すると、どうしても「結末」や「最後」のネタバレが気になってしまうものですよね。ですが、本作の結末だけは、絶対に情報を入れずにご自身で読んでほしいと強く願います。

なぜなら、多くの読者が「泣いた」「衝撃と感動で鳥肌が立った」と評価しているポイントが、すべての伏線が収束する「結末」に凝縮されているからです。

キーワードだけお伝えすると、それは「壮大な時間トリック」と、そのトリックによって導き出される、あまりにも切実な「母子の愛」の物語です。

物語の冒頭、量子が幼稚園からの帰りを待っていた、息子の「翔(しょう)」。彼の存在が、この物語の最大の鍵を握っています。

「夫殺し」のサスペンスから始まった物語が、SF的な「ジャバウォック」との戦いを経て、最終的には「記憶を失い、時間の迷子になった母を、成長した息子が救い出す」という、壮大な愛の物語に着地します。

このジャンルの変遷と、最後に明かされる「破魔矢の正体」こそが、綾辻行人さんが絶賛した「最高の醍醐味」なのだと思います。

文庫情報と現在の値段

文庫情報と現在の値段

『さよならジャバウォック』は、2025年10月22日に双葉社から単行本(ハードカバー)が発売されたばかりです。

そのため、残念ながら現時点(2025年11月)で文庫化はされていません。待ち遠しいですね。

一般的な傾向として、単行本が文庫化されるまでには、早くても2年、通常は3年ほどかかることが多いです。ベストセラーになれば少し早まることもありますが、気長に待つ必要がありそうです。

すぐに読みたい方へ(単行本)

現在(2025年11月時点)は、単行本での購入となります。価格(定価)は1,870円となっていますが、書店やオンラインストアによってはポイント還元や送料が異なる場合があります。

正確な価格や在庫状況については、お近くの書店や各オンライン販売サイトで直接ご確認ください。

すぐに読みたい方へ(電子書籍)

「紙の本でなくてもいい」「とにかく早く読みたい!」という方には、電子書籍版がおすすめです。購入したらすぐにダウンロードして読み始められるのが魅力ですね。

電子書籍の配信サービスもたくさんありますが、個人的には初回購入時の割引クーポンなどが強力なDMMブックスをよく利用しています。キャンペーンなども含めてチェックしてみると良いかもしれません。

さよならジャバウォックのあらすじと魅力まとめ

今回は、伊坂幸太郎さんのデビュー25周年記念作『さよならジャバウォック』のあらすじや魅力を、核心的なネタバレに触れない範囲でご紹介しました。

「あらすじ」というキーワードからこの記事にたどり着いた方も、本作が単なるサスペンスではなく、ミステリー、SF、そして壮大な家族愛が融合した、まさに伊坂幸太郎さんらしい「全部入り」の最高峰エンターテイメントだということが伝わったかと思います。

導入部の「夫殺し」という強烈な謎、ジャバウォックという超常的な脅威、魅力的なキャラクターたち、そして全てがひっくり返る衝撃と感動の結末。伊坂さんが仕掛けた「ミステリーの勝負」、ぜひその目で確かめてみてくださいね。

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