馳星周さんの直木賞受賞作、小説『少年と犬』のあらすじについて詳しく知りたいと思っていませんか。この感動的な物語は多くの読者の心を揺さぶっていますが、同時に「この話は実話なの?」「作者が本当に伝えたい事は何だろう?」といった疑問も生まれています。
また、心に残る名言や印象に残った言葉がある一方で、一部には面白くないという感想や、読むのが辛くなる気まずいシーンがあるとの声も。この記事では、これから作品を読む方や、読書感想文のテーマを探す中学生のために、例文のヒントから作品はどこで読めるかまで、あらゆる情報を網羅的に解説します。
- 『少年と犬』の全体的なあらすじ
- 良い点と悪い点を含む多角的な感想や評価
- 原作小説と映画版の具体的な違い
- お得に作品を楽しむ方法やサービス
「少年と犬」小説のあらすじと基本情報

- 旅の軌跡を追う物語のあらすじ
- この物語は実話?元ネタについても解説
- 作者が作品を通して伝えたい事とは
- 心に響く名言・印象に残った言葉
- 面白くないという感想は本当にあるのか
旅の軌跡を追う物語のあらすじ

『少年と犬』は、2011年の東日本大震災で大切な飼い主を亡くした一匹の犬、多聞(たもん)の壮大な旅を描いた物語です。シェパード系の賢い雑種犬である多聞は、瓦礫の街と化した宮城県の地から、強い意志を秘めてただひたすらに南を目指し、約5年にもわたる長い旅を始めます。この物語は、多聞が道中で出会う人々の視点で描かれる、6編からなる連作短編集です。
第1章:男と犬(宮城)
旅の始まりは、震災で職を失い、認知症の母を支えるために窃盗団の運転手をしている男・和正との出会いから。和正は偶然出会った多聞を守り神のように感じ、危険な仕事にさえも連れて行きますが、ある事件をきっかけに多聞と離れ離れになってしまいます。
第2章:泥棒と犬(新潟)
和正と別れた多聞は、窃盗団の外国人・ミゲルと共に新潟へ。追われる身となったミゲルは、多聞との短い触れ合いの中に安らぎを見出しますが、過酷な運命が彼を待ち受けます。
第3章:夫婦と犬(富山)
次に多聞が出会ったのは、関係が冷え切ってしまった中山夫婦。夫は多聞を「トンバ」、妻は「クリント」とそれぞれ別の名前で呼び、犬を介して僅かな繋がりを保とうとします。多聞の存在は、壊れかけた二人の関係に静かな変化をもたらします。
第4章:娼婦と犬(滋賀)
滋賀では、恋人を殺害し、罪の意識に苛まれる娼婦・美羽に拾われます。人生のどん底にいた美羽にとって、多聞は唯一心を許せる存在となり、彼女が自らの罪と向き合い、未来へ踏み出すための大きな支えとなります。
第5章:老人と犬(島根)
旅は西へ進み、島根の山中で暮らす老猟師・弥一のもとへ。末期がんに侵され、死期を悟っていた弥一は、まるで自分を看取るために現れたかのように感じた多聞を「ノリツネ」と名付け、穏やかな最後の日々を共に過ごします。
物語の核心:一途な想いが紡ぐ希望
この物語は、単なる犬の冒険譚ではありません。多聞は行く先々で、貧困、犯罪、家庭不和、病といった、人間のどうしようもない弱さや愚かさに直面します。それでもなお、彼は人々の傍らに静かに寄り添い、無償の愛を与え続けます。
そして、物語全体を貫く最大の謎は「多聞は一体誰に会うために、これほど長い旅を続けているのか?」という点です。数々の出会いと別れを繰り返しながらも、決して揺らぐことのないその一途な想いの先にあるものが明らかになったとき、この旅の本当の意味が分かり、物語は深い感動に包まれるのです。
この物語は実話?元ネタについても解説
この物語の感動的な内容から、「これは実話なのでは?」と感じる読者も少なくありません。しかし、『少年と犬』は馳星周さんによる完全なフィクション作品です。
物語の背景には、東日本大震災や熊本地震といった実際に起きた出来事が描かれており、それが作品に強いリアリティを与えています。ただ、多聞という犬が仙台から熊本まで旅をしたという具体的な元ネタや実話が存在するわけではありません。
作者の馳星周さんは大の犬好きとして知られており、自身の愛犬との生活が作品に大きな影響を与えていると考えられます。犬への深い愛情と洞察力があるからこそ、これほどまでに読者の心を打つ犬の物語を描き出すことができたのでしょう。
作者と犬の関係
馳星周さんはこれまでにも『ソウルメイト』など、犬をテーマにした小説を数多く発表しています。彼にとって犬は単なるペットではなく、人生の伴侶ともいえる特別な存在です。その犬への想いが、多聞というキャラクターに色濃く反映されています。
作者が作品を通して伝えたい事とは

『少年と犬』は、犬と人間の絆の美しさを描いているだけではありません。この物語には、より深く、普遍的なテーマが込められていると考えられます。
一つは、「喪失と再生」です。登場人物の多くは、震災や個人的な事情によって大切な何かを失っています。多聞との出会いは、彼らが失ったものと向き合い、再び前を向いて歩き出すきっかけを与えます。多聞は、癒えない悲しみに寄り添う希望の象徴として描かれているのです。
この物語を読むと、人間がいかに弱く、そして同時に強くもあるかを考えさせられます。多聞は言葉を話しませんが、その存在そのものが、困難な状況にある人々にとっての「救い」となっている点が非常に印象的です。
また、「人間と動物の根源的な関係」も重要なテーマです。作中には、犬が人間にとってどれほど特別な存在であるかを示す言葉が登場します。損得勘定なく、ただ純粋に人に寄り添う犬の姿を通して、現代社会で忘れがちな無償の愛や信頼とは何かを問いかけているのかもしれません。
心に響く名言・印象に残った言葉
『少年と犬』には、読者の心に深く刻まれる印象的な言葉が散りばめられています。ここでは、特に物語のテーマを象徴する二つの言葉を紹介します。
老猟師・弥一の言葉
「人という愚かな種のために、神様だか仏様だかが遣わしてくれた生き物なのだ。人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にはいない」
これは、多聞と最後の日々を過ごす老猟師の言葉です。人間のエゴや愚かさを知り尽くした彼が語るからこそ、犬という存在の尊さが際立ちます。人間と犬の長い歴史と特別な絆を感じさせる、重みのある名言です。
少年・光の言葉
「多聞はいつも、心の中でずっと生きている」
物語の最後に登場するこの言葉は、物理的な別れを超えた魂の繋がりを示唆しています。たとえ姿が見えなくなっても、大切な存在が与えてくれた温もりや記憶は心の中で生き続けるという、作品全体のテーマを凝縮した一文と言えるでしょう。
面白くないという感想は本当にあるのか

本作は直木賞を受賞し、多くの読者から絶賛されていますが、一方で「面白くない」「合わなかった」という感想も存在します。どのような点がそう感じさせるのでしょうか。
主な理由としては、物語の展開が非常に重く、救いのないエピソードが多いことが挙げられます。多聞が出会う人々の多くは、犯罪や貧困、病気といった深刻な問題を抱えており、その結末も決して幸福なものばかりではありません。
注意点:感動だけを期待すると辛くなる可能性
心温まる動物物語を期待して読むと、次々と描かれる人間の闇や悲劇に心が疲れてしまうかもしれません。特に、多聞が関わった人物が不幸な結末を迎える展開が続くため、「この犬は死神なのでは?」と感じてしまったという声もあります。ただ、それらの苦難があるからこそ、最後の希望がより一層輝くという構成になっています。
また、「展開が安直すぎる」「泣かせようとしているのが見え見え」といった、物語の構成に対する批判的な意見も見られます。感動の捉え方は人それぞれであるため、こうした多様な感想が生まれるのは自然なことと言えるでしょう。
「少年と犬」小説のあらすじ以外の評価

- 賛否が分かれる気まずいシーンとは
- 読書感想文で使える中学生向けの例文
- 映画と原作の違いはどこにあるのか
- 小説はどこで読める?おすすめの方法
賛否が分かれる気まずいシーンとは
『少年と犬』には、一部の読者が「気まずい」「読むのが辛い」と感じる可能性のあるシーンが含まれています。事前に知っておくことで、心の準備ができるかもしれません。
1. 「娼婦と犬」の章の描写
物語の中盤に登場する「娼婦と犬」の章では、主人公の女性の職業柄、性的な表現や暴力的な描写が含まれています。これらは物語のリアリティを高める上で必要な要素ですが、苦手な方にとっては読み進めるのが辛い部分となる可能性があります。
2. 登場人物の倫理観
多聞が出会う人々の中には、窃盗や殺人を犯す人物も登場します。彼らは決して単純な悪人として描かれているわけではありませんが、その行動に共感できず、不快感を覚える読者もいます。特に、主人公たちが犬に対しては深い愛情を見せる一方で、人間に対しては非情な一面を持つ描写に、倫理的な葛藤を感じることがあるようです。
これらのシーンは、人間の多面性や社会の暗部を描くための重要な要素です。ただ、美しいだけの物語ではないという点は、心に留めておくと良いでしょう。
読書感想文で使える中学生向けの例文

『少年と犬』は、命の尊さや他者との関わりについて深く考えさせられるため、中学生の読書感想文の題材として非常に適しています。ここでは、感想文をどのように構成すればよいか、ヒントとなるポイントを紹介します。
読書感想文の構成案
- この本を選んだ理由:なぜ『少年と犬』に興味を持ったのかを簡単に書きます。(例:「犬が好きだから」「直木賞受賞作だったから」など)
- 心に残った場面や登場人物:物語の中で一番印象的だったシーンや、共感した登場人物について具体的に記述します。多聞のひた-きさや、ある登場人物の優しさに触れると書きやすいです。
- 作品のテーマについて考える:この物語を読んで、「人と動物の絆」や「希望を持つことの大切さ」について何を感じ、考えたかを自分の言葉で表現します。
- 自分自身の経験との結びつけ:ペットを飼った経験や、誰かに助けられた経験など、自分自身の体験と物語を関連付けて考察を深めます。(例:「この本を読んで、自分の家の犬との接し方を見直したいと思った」など)
- 結論:この読書体験を通して学んだことや、今後の生活にどう活かしていきたいかをまとめて締めくくります。
この構成に沿って自分の考えを整理することで、オリジナリティのある深い内容の読書感想文を作成することができるはずです。
読書感想文の例文(書き出し・中盤)
以下に、上記の構成案に沿った書き出しと中盤の例文を紹介します。ぜひ参考に、自分自身の言葉で感想を紡いでみてください。
僕がこの『少年と犬』を手に取ったのは、本屋で表紙に描かれた犬のまっすぐな瞳に惹かれたからです。「直木賞受賞作」という帯の言葉も、どんな物語なのだろうと興味を持つきっかけになりました。
物語は、震災で飼い主を失った犬「多聞」が、多くの人と出会いながら長い旅を続ける話です。その中で僕が特に心に残っているのは、末期がんに侵された老猟師の弥一さんと多聞が過ごす場面です。多聞は弥一さんの病気を治すわけでも、特別な芸をするわけでもありません。ただ静かに弥一さんの隣に座り、寄り添っているだけです。
しかし、その静かな存在が、孤独な弥一さんの心をどれだけ温めたかと思うと、胸が熱くなりました。この場面を読んで、誰かを「支える」ということは、何か大きなことをすることだけではないのだと気づかされました。ただそばにいて、相手を思う気持ちが一番大切なのかもしれません。言葉が通じなくても、多聞と弥一さんの間には、人間同士よりも深い絆があったように感じました。
映画と原作の違いはどこにあるのか
2025年に公開された映画版『少年と犬』は、原作の感動を映像で表現していますが、物語の構成にはいくつかの大きな違いがあります。どちらも素晴らしい作品ですが、その違いを知ることで、より深く楽しむことができます。
比較項目 | 原作小説 | 映画版 |
---|---|---|
構成 | 6編からなる連作短編集。多聞が次々と別の飼い主のもとを渡り歩く。 | 複数のエピソードを再構成。一本の長編ストーリーとして描かれる。 |
登場人物の関係性 | 各章の主人公は独立しており、基本的に互いに出会うことはない。 | 原作では出会わない和正と美羽が出会い、共に行動するなど、映画オリジナルの関係性が描かれる。 |
物語の焦点 | 多聞という存在を通して、様々な人間の孤独や人生の断片を映し出す点に重きが置かれている。 | 和正と美羽という二人の主人公の成長と関係性の変化に、より焦点が当てられている。 |
最大の違いは、原作では接点のない人物たちが映画では深く関わり合い、新たな物語が生まれている点です。原作を読んでから映画を観ると、キャラクターの解釈の違いやストーリーの改変部分を発見する楽しみがあります。逆に、映画を観てから原作を読むと、各登場人物のより詳細な内面描写に触れることができ、物語の世界を一層深く理解できるでしょう。
小説はどこで読める?おすすめの方法

『少年と犬』を読みたいと思った方のために、お得に楽しめるおすすめの方法を2つ紹介します。
1. 電子書籍で手軽に読むなら「DMMブックス」
すぐに読みたい、保管場所に困りたくないという方には電子書籍がおすすめです。特にDMMブックスでは、初回購入限定で90%OFFクーポンが配布されるキャンペーンを頻繁に実施しています(※2025年9月時点の情報)。これを利用すれば、非常にお得に購入することが可能です。スマートフォンやタブレットですぐに読み始められる手軽さも魅力です。
2. 「聞く読書」で楽しむなら「Audible」
通勤中や家事をしながら作品を楽しみたい方には、Amazonが提供するオーディオブックサービス「Audible(オーディブル)」が最適です。プロのナレーターが朗読してくれるため、物語の世界に深く没入できます。特に『少年と犬』のような感動的な物語は、耳から聞くことで情景が鮮やかに浮かび、新たな読書体験となるでしょう。Audibleは最初の1冊を無料で試せる体験期間があるため、気軽に始めることができます。

もちろん、紙の書籍でじっくりとページの質感を楽しみながら読みたい方は、単行本や文春文庫版が全国の書店やオンラインストアで販売されています。自分に合ったスタイルで、この素晴らしい物語に触れてみてください。
「少年と犬」の小説あらすじについて総括
今回の記事の内容をまとめます。
- 『少年と犬』は馳星周による第163回直木賞受賞作
- 東日本大震災で飼い主を失った犬「多聞」の旅の物語
- 物語の舞台は仙台から始まり熊本を目指す
- 道中で心に傷を負った様々な人々と出会い寄り添う
- この物語は実話ではなくフィクション作品
- 作者自身の犬への深い愛情が作品に反映されている
- テーマは「喪失と再生」や「人間と動物の絆」
- 心に響く名言が多く読書感想文の題材にも適している
- 一方で物語が重く悲劇的な展開が多いため合わない人もいる
- 「娼婦と犬」の章には性的な描写が含まれる点に注意
- 2025年に映画化され原作とは異なる構成で描かれている
- 映画では原作で出会わない登場人物が共に行動する
- 作品は電子書籍やオーディオブックでも楽しめる
- DMMブックスの初回クーポンを利用するとお得に購入可能
- Audibleなら「聞く読書」として新たな体験ができる