
こんにちは。あらすじブックマーク、管理人の「おうみ」です。イギリス文学の中でも特に悲劇的で美しいとされるトーマス・ハーディの傑作『テス』。日本ではしばしば「ダーバビル家のテス」という名でも翻訳されている、この小説のあらすじや詳しい結末を知りたいという方や、登場人物の複雑な関係性が気になっている方は多いのではないでしょうか。
また、映画版を見た後に原作との違いを確認したくなったり、本当にあった実話なのか疑問に思ったりすることもありますよね。今回はそんな物語の全貌を、私なりの視点で分かりやすく解説していきたいと思います。
- 物語の全7部にわたる詳細なあらすじと結末
- 家系図から読み解く登場人物たちの複雑な因縁
- 主人公テスが殺人という悲劇に至った真の動機
- 現代の読者からエンジェルが批判される理由
テスの小説あらすじと物語の背景
まずは、物語の核心である詳細なあらすじと、この悲劇を生み出すことになった背景設定について、順を追って見ていきましょう。ハーディが描く世界は単なる恋愛小説ではなく、社会や運命への問いかけが詰まっています。
第七部まで描く詳細なあらすじ
『テス』の物語は、ハーディ自身によって7つの「フェーズ(部)」に分けられています。それぞれの段階でテスの運命がどのように変化していくのか、詳しく追っていきましょう。
第一部:乙女 —— 運命の歯車が回り始める

物語は、貧しい行商人であるテスの父ジョンが、自分たちはかつての名門騎士「ダーバヴィル家」の末裔だと知らされるところから始まります。この「家系の発見」こそが、すべての悲劇の引き金でした。
父は浮かれ、酔っ払って仕事ができなくなります。代わりに馬車を出したテスは、事故で一家の唯一の財産である馬の「プリンス」を死なせてしまいます。深い罪悪感に苛まれたテスは、家計を助けるために、近くの屋敷に住む「ダーバヴィル家(実は名前を買っただけの偽物)」へ援助を求めに行くことを承諾します。
そこで出会ったのが、金持ちの息子アレックです。彼はテスの美しさに目をつけ、執拗に迫ります。そしてある夜、深い森の中でテスはアレックによって純潔を奪われてしまうのです。
第二部:乙女ならぬ乙女 —— 孤独と喪失
傷ついたテスは実家に戻りますが、彼女のお腹には新しい命が宿っていました。村人たちの冷ややかな視線に耐えながら、彼女は男の子を出産し「悲しみ(Sorrow)」と名付けます。
母としてのテス
テスは病弱な我が子のために自ら洗礼を行いますが、赤ん坊はすぐに亡くなってしまいます。教会への埋葬さえ拒否される中、彼女は塀の隅に小さな墓を作りました。この経験が、彼女の宗教観や社会への不信感を形成していきます。
第三部:立ち直り —— 新たな恋と希望

悲しい過去を断ち切るため、テスは遠く離れたタラボシーズ酪農場で働き始めます。そこは光と緑に溢れた場所でした。彼女はそこで、牧師の息子でありながら農業を学ぶ青年、エンジェル・クレアと出会います。
二人は惹かれ合い、テスはエンジェルからの求婚を受け入れます。しかし、彼女の心には常に「アレックとの過去」という重い秘密がのしかかっていました。
第四部:結果 —— 告白と拒絶
結婚式の夜、エンジェルは自分の過去の過ち(ロンドンでの女性関係)をテスに告白します。テスは彼を許し、自分も同じように過去を打ち明けました。「これで対等になれた」と思ったのも束の間、エンジェルの態度は一変します。
「君は僕が愛したテスではない」
彼はテスを拒絶し、ブラジルへ旅立ってしまいます。テスは再び一人残されることになりました。
第五部〜第六部:女の支払い・改宗者 —— 悪魔の再来
エンジェルからの送金も底をつき、テスは過酷な労働環境の農場で働きます。そんな彼女の前に現れたのは、なんと伝道師として改心したはずのアレックでした。彼はテスを見ると信仰を捨て、再び彼女に執着し始めます。
父の死により住む家を追われ、路頭に迷う母と弟妹たち。アレックは「家族を救う代わりに自分の女になれ」と迫ります。エンジェルに助けを求める手紙も無視され、テスはついに家族のために自分を犠牲にする道を選んでしまうのです。
第七部:成就 —— 復讐と永遠の眠り
ブラジルから戻り、自分の過ちに気づいたエンジェルがテスを探し当てた時、彼女はすでにアレックの愛人として暮らしていました。「遅すぎたのよ」と絶望するテス。エンジェルが去った後、彼女は衝動的にナイフを手に取り、アレックを刺殺します。
テスはエンジェルを追いかけ、二人は逃避行の末、ストーンヘンジに辿り着きます。古代の祭壇の上で眠るテス。夜明けと共に警官隊に包囲され、彼女は静かに連行されていくのでした。
複雑な家系図と主要な登場人物
この物語の悲劇性を高めているのが、血統や家柄といった要素です。主要な関係性を整理してみました。
| 人物名 | 役割・特徴 |
|---|---|
| テス・ダーバヴィルフィールド | 主人公。貧しい農家の娘だが、実は名門ダーバヴィル家の直系子孫。美しく情深いが、運命に翻弄される。 |
| エンジェル・クレア | テスの夫。理想主義的な牧師の息子。テスを「自然の女神」として崇拝するが、現実を受け入れられない脆さがある。 |
| アレック・ダーバヴィル | テスを誘惑し、人生を狂わせた男。実は「ストーク家」という商人の家系で、ダーバヴィルの名は金で買った偽物。 |
皮肉なことに、テスが血縁を頼って訪ねたアレックの家は、血の繋がりが全くない「赤の他人」でした。この「偽りの家系」こそが、テスの人生を破滅へと導いたのです。
テスの悲劇は実話?真相を検証
よく「テスは実話に基づいているのですか?」という疑問を耳にします。結論から言うと、テスという特定のモデルがいたわけではありませんが、当時の社会的な現実を色濃く反映した物語であると言えます。
「清らかなる女性」論争
ハーディがこの作品に『清らかなる女性(A Pure Woman)』という副題をつけたことは、当時大きなスキャンダルとなりました。ヴィクトリア朝の社会では、婚外子を産んだ女性は「堕落した女」と見なされていたからです。しかしハーディは、たとえ肉体が汚されても、テスの精神は純潔であると主張したかったのでしょう。
なぜテスはアレックを殺したのか

物語のクライマックスで、テスはアレックを殺害します。なぜそこまで極端な行動に出たのでしょうか。私なりに読み解くと、以下の3つの要因が重なったと考えられます。
- 「エンジェルは戻らない」という嘘への怒り
アレックはテスを手に入れるため、「夫はお前を見捨てた」と嘘をつき続けました。エンジェルが戻ってきたことでその嘘が露呈し、彼女の絶望が爆発したのです。 - 唯一の解決策
当時の法律や状況では、アレックとの関係を清算してエンジェルの元へ戻るには、アレックという存在を物理的に消す以外に道がなかったとも言えます。 - 魂の浄化
自分の人生を狂わせた元凶を断つことで、彼女は象徴的に「純潔」を取り戻し、エンジェルにふさわしい妻になろうとしたのかもしれません。
エンジェルがクズと評価される理由
現代の読者、特に女性からの評判がすこぶる悪いのがエンジェルです。検索候補にもネガティブな言葉が並ぶほどですが、その最大の理由は彼の「ダブルスタンダード(二重基準)」にあります。
彼は自分も過去に女性関係の過ちを犯していながら、それは「若気の至り」として許されると考え、一方で被害者に近いテスの過去は絶対に許しませんでした。「勝手に理想を押し付け、勝手に幻滅して去っていく」という身勝手さが、現代的な視点では「クズ」と映ってしまうのも無理はないですね。
テスの小説あらすじから見る解釈
あらすじを把握したところで、この物語が私たちに何を訴えかけているのか、もう少し踏み込んで解釈してみましょう。ラストシーンの意味や、映画版との違いを知ることで、作品の深みがより増すはずです。
衝撃的なラストシーンの解釈
物語の最後、処刑されたテスを示す「黒旗」が掲げられます。ハーディはここで、「正義はなされた」という非常に皮肉めいた表現を使っています。
この結末は、テスという一人の女性が、社会の偏見や理不尽な運命に対する「生贄」として捧げられたことを意味しているように思えてなりません。ストーンヘンジという異教の祭壇で捕まったことも、彼女が文明社会の犠牲者であることを象徴しています。ハッピーエンドではありませんが、テスはようやく苦しみから解放され、永遠の眠りにつくことができたのだと、私は解釈しています。
現代の読者の感想やレビュー
今の時代に『テス』を読んだ人たちは、どのような感想を持っているのでしょうか。レビューサイトなどを見てみると、やはりテスへの同情と、男性陣への怒りが圧倒的です。
よくある感想の傾向
- 「テスが可哀想すぎて読んでいて辛い」
- 「エンジェルの偽善者ぶりが許せない」
- 「アレックよりもエンジェルの方が残酷かもしれない」
- 「ラストシーンの美しさと虚無感がすごい」
出版当時は不道徳だと批判されたテスですが、現代では「強く生きた女性」として、あるいは「理不尽な社会と戦った女性」として、共感を持って受け入れられています。
映画版と原作の違いを徹底比較

『テス』は何度か映像化されていますが、特に有名なのがロマン・ポランスキー監督の映画『テス』(1979年)です。原作との大きな違いとしてよく挙げられるのが、アレックとの関係性の描写です。
原作では、森での出来事が合意なのか強制なのか曖昧にぼかされていますが(限りなく強制に近い)、映画版ではより視覚的に、テスの抵抗と無力感が美しくも残酷に描かれています。特に、アレックがテスにイチゴを食べさせるシーンは、彼の支配欲とテスの受動性を象徴する名シーンとして有名です。
映画版は映像美が素晴らしい一方で、原作にあるテスの内面の葛藤や、エンジェル視点の心理描写はやや省略されがちです。映画を見て気になった方は、ぜひ原作で補完することをおすすめします。
名作の翻訳版はどこで読めるか
『テス』は古典文学なので、多くの出版社から翻訳が出ています。岩波文庫や新潮文庫などが手に入りやすく、図書館でも必ずと言っていいほど置いてあります。
古い翻訳だと少し言葉遣いが難しい場合もあるので、書店でパラパラと読んでみて、自分に合いそうな訳を選ぶのが良いでしょう。電子書籍でも読めるものが多いので、スマホで少しずつ読み進めるのもアリですね。
電子書籍の配信サービスもたくさんありますが、個人的には初回購入時の割引クーポンなどが強力なDMMブックスをよく利用しています。キャンペーンなども含めてチェックしてみると良いかもしれません。
テスの小説あらすじ徹底まとめ
ここまでトーマス・ハーディの『テス』について、あらすじや背景、解釈を解説してきました。最後に要点を振り返ってみましょう。
- テスの悲劇は、父が「偽の名門家系」を知ったことから始まった。
- エンジェルの拒絶理由は、現代視点では理不尽な「二重基準」によるもの。
- アレック殺害は、絶望の中でエンジェルと生きるための最後の手段だった。
- ラストシーンは、社会の犠牲となったテスの解放を象徴している。
『テス』は単なる悲劇の物語ではなく、「純潔とは何か」「正義とは何か」を私たちに問いかけてくる作品です。あらすじを知った上で読むと、ハーディが込めたメッセージや、風景描写に隠された心理がより深く理解できると思います。気になった方は、ぜひ実際に手にとって、テスの数奇な運命を見届けてみてください。


