梨木香歩さんの名作ファンタジー小説『裏庭』。その独特な世界観と深いテーマ性から、多くの読者を魅了し続けています。
この記事では、小説『裏庭』のあらすじはもちろん、物語を彩る登場人物、作品の深い見どころや考察、さらには作者である梨木香歩さんの人物像に至るまで、網羅的に解説します。
また、読者の感想や評価、そしてどこで読めるのかについても触れていきますので、これから読もうか迷っている方も、すでに読んだ方も、ぜひ新たな発見を楽しんでください。
- 小説『裏庭』のネタバレなしのあらすじ
- 物語の主要な登場人物とその関係性
- 作品のテーマや見どころに関する深い考察
- 『裏庭』をお得に読めるおすすめの方法
『裏庭』小説のあらすじと作品概要

- 物語のあらすじをネタバレなしで紹介
- 物語を彩る主要な登場人物たち
- 作者である梨木香歩はどんな作家?
物語のあらすじをネタバレなしで紹介

物語の主人公は、13歳の少女、照美(てるみ)。彼女は、近所にある今は誰も住んでいない古い洋館「バーンズ屋敷」の庭を遊び場にしていました。しかし、双子の弟を亡くした苦い思い出から、いつしかその庭へは足を運ばなくなっていました。
ある日、親友のおじいさんが病に倒れたことをきっかけに、照美は再びバーンズ屋敷を訪れます。そして、屋敷の中にある大きな鏡を通り抜け、「裏庭」と呼ばれる不思議な異世界へと迷い込んでしまうのです。
崩壊の危機に瀕した「裏庭」の世界。照美は元の世界へ帰るため、世界中に散らばってしまったという竜の骨を集めるための、長く厳しい旅に出ることを余儀なくされます。それは、声だけの案内人に導かれる、孤独で、自分自身の心の奥深くへと向き合うことになる冒険の始まりでした。
現実と異世界が交差する物語
この物語の特徴は、照美が冒険するファンタジーな「裏庭」の世界と、彼女のいない現実世界での出来事が交互に描かれる点にあります。二つの世界が並行して進むことで、物語に奥行きと重厚感が生まれています。
少女の心の成長と、母と娘の関係性の修復を描いた、単なるファンタジーでは終わらない、深く哲学的な物語です。
物語を彩る主要な登場人物たち

『裏庭』の物語は、個性豊かで象徴的な登場人物たちによって、より一層深みを増しています。ここでは、物語の中心となる人物を紹介します。
登場人物 | 解説 |
---|---|
照美(テルミィ) | 本作の主人公。13歳の少女。ある出来事をきっかけに「裏庭」の世界へ迷い込む。弟の死や両親との関係に悩み、心に孤独を抱えている。 |
スナッフ | 「裏庭」で照美の旅の供となる存在。皮肉屋で掴みどころがないが、多くの知識を持つ。その名前や言動には不穏な雰囲気が漂う。 |
さっちゃん(幸江) | 照美の母親。息子を失った悲しみと、自身の母親との確執から、心に「鎧」をまとって生きている。照美との間に距離が生まれてしまっている。 |
レイチェル・バーンズ | バーンズ屋敷のかつての住人。物語の鍵を握る人物の一人で、「裏庭」の秘密を知っている。 |
この他にも、「裏庭」の世界には手を失ったコロウプのテナシや、三つの村を治める老婆たちなど、照美の旅に影響を与える多くの人物が登場します。彼らとの出会いの一つ一つが、照美を成長させていく重要な要素となっています。
作者である梨木香歩はどんな作家?
『裏庭』の作者である梨木香歩(なしき かほ)さんは、1959年生まれの小説家です。鹿児島県に生まれ、同志社大学を卒業後、イギリスへ留学した経験を持ちます。
1994年に発表した『西の魔女が死んだ』でデビューし、数々の文学賞を受賞。一躍、人気作家の仲間入りを果たしました。叙情性豊かで、どこか哲学的、そして自然や生命に対する深い洞察に満ちた作風で、子どもから大人まで幅広い世代の読者から支持されています。
『裏庭』もまた、児童文学ファンタジー大賞を受賞するなど、非常に高い評価を受けている作品の一つです。
梨木香歩さんの主な受賞歴
- 『西の魔女が死んだ』:日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、小学館文学賞
- 『裏庭』:児童文学ファンタジー大賞
- 『沼地のある森を抜けて』:センス・オブ・ジェンダー賞大賞、紫式部文学賞
- 『家守綺譚』:本屋大賞3位入賞
梨木さんの作品は、物語の面白さはもちろんのこと、生きることの意味や、人と人との関係性について深く考えさせられる点が大きな魅力と言えるでしょう。
『裏庭』小説のあらすじ以外の魅力

- 物語の見どころと深いテーマの考察
- 読者の感想や評価にはどんな声がある?
- 小説『裏庭』はどこで読める?
物語の見どころと深いテーマの考察

『裏庭』の魅力は、ただの冒険譚にとどまらない、その深いテーマ性にあります。ここでは、物語を読み解く上での重要な見どころや考察をいくつか紹介します。
テーマ①:「傷」とどう向き合うか
作中で繰り返し登場するのが「傷」というキーワードです。主人公の照美だけでなく、母親のさっちゃんをはじめ、多くの登場人物が心に何らかの傷を抱えています。
物語では、傷つかないように心を閉ざす「鎧」や、傷を恐れて他者との関わりを絶つ村、逆に傷を癒すこと自体に執着する村などが描かれます。これらは、私たちが現実で傷と向き合う際の様々な姿を象徴していると言えるでしょう。
梨木さんは、「傷つくことを避けられないのなら、どう受け入れ、共に生きていくか」という問いを投げかけています。「傷を育てなさい」という作中の言葉は、この物語の核心に触れる重要なメッセージです。
ファンタジーでありながらホラー的な側面も
あらすじだけを読むと幻想的な物語を想像するかもしれませんが、『裏庭』には背筋が寒くなるような不穏な空気や、衝撃的な展開も含まれています。特に旅の仲間であるスナッフの存在や、物語の結末については、ホラーやバッドエンドと感じる読者も少なくありません。甘いだけのファンタジーではない点は、読む前に知っておくと良いかもしれません。
テーマ②:自己との対峙と成長
「裏庭」への旅は、主人公である照美自身の心の中への旅でもあります。彼女は冒険を通して、目を背けてきた弟の死の記憶、親に愛されていないのではないかという孤独感、そして自分の中に存在する憎悪といった、おぞましい感情にさえ向き合うことになります。
多くの物語が「悪い感情」を乗り越えるべき対象として描くのに対し、『裏庭』ではそうした負の感情も全て自分の一部として認め、受け入れることの重要性を示唆しています。この「清濁併せ呑む」姿勢こそが、真の成長につながるのだと、この物語は教えてくれます。
最終的に照美が「私は、もう、だれの役に立たなくてもいいんだ」と思えるようになるシーンは、多くの読者の心を打つ名場面の一つです。
読者の感想や評価にはどんな声がある?

『裏庭』は、読む人によって受け取り方が大きく分かれる作品でもあります。ここでは、実際に読んだ方々の感想や評価に、どのような声があるのかを見ていきましょう。
【肯定的な感想】
「自分の心の傷と重なり、セラピーのような読書体験だった」「ただ優しいだけの物語ではなく、人間の暗い部分も肯定してくれるところに救われた」「難解だけど、何度も読み返して考察したくなる」「『西の魔女が死んだ』が光なら、こちらは闇。両方読んでこそ梨木作品の深さがわかる」といった声が多く見られます。自分自身の内面と向き合うきっかけになった、という評価が目立ちます。
【否定的な感想・その他】
一方で、「物語が暗く、読んでいて辛くなった」「表現が抽象的で、何が言いたいのかよく分からなかった」「前半が少し退屈に感じた」という感想も見受けられます。物語のテーマが心に響かないと、単に難解で暗い話だと感じてしまう可能性もあるようです。人を選ぶ作品であることは間違いないでしょう。
総じて、「深く心に刺さる人」と「全く合わない人」に分かれやすい傾向があります。しかし、もしあなたが今、何らかの生きづらさや心の痛みを抱えているのであれば、この物語は他にはない特別な一冊になるかもしれません。
小説『裏庭』はどこで読める?
梨木香歩さんの『裏庭』は、多くの読者に長年愛されている作品のため、比較的簡単に入手することができます。主な入手方法は以下の通りです。
書籍(文庫本)
現在、最も手軽なのは新潮文庫版です。全国の書店や、Amazon、楽天ブックスなどのオンラインストアで購入可能です。中古であれば、さらに安価に手に入れることもできるでしょう。
電子書籍
もちろん、電子書籍としても配信されています。Kindle、Kobo、DMMブックスなど、主要な電子書籍ストアで取り扱いがあります。スマートフォンやタブレットですぐに読みたい方にはこちらがおすすめです。
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ご自身の読書スタイルに合わせて、最適な方法を選んでみてください。

『裏庭』の小説あらすじについて総括
今回の記事の内容をまとめます。
- 『裏庭』は梨木香歩による児童文学ファンタジー大賞受賞作
- 主人公は13歳の少女、照美
- 古い洋館の鏡を抜け、異世界「裏庭」へ迷い込む物語
- 現実世界とファンタジー世界が交互に描かれる構成が特徴
- 旅の仲間として皮肉屋のスナッフが登場する
- 物語の重要なテーマは「傷」との向き合い方
- 自己の負の感情も含めて肯定するメッセージが込められている
- 母と娘の断絶と和解も描かれる
- 読者によってはホラーやバッドエンドと感じる部分もある
- 著者の梨木香歩は『西の魔女が死んだ』でも有名
- 感想は「深く刺さった」という声と「難解で合わない」という声に分かれる
- 人を選ぶ作品だが、心に響く人には特別な一冊となる
- 書籍は新潮文庫版が広く流通している
- 主要な電子書籍ストアでも購入可能
- 電子書籍なら初回クーポンがあるDMMブックスも選択肢の一つ