大江賢次の小説「絶唱」のあらすじを詳しく知りたい、と思っていませんか。この不朽の名作は、多くの読者の心を打ち、何度も映像化されてきました。しかし、純粋なラブストーリーとしてだけでは語れない、その深い魅力や背景については意外と知られていないかもしれません。
この記事では、絶唱という小説のあらすじはもちろん、物語を彩る登場人物、作品の重要な見どころ、そしてヒロインである小雪の死因に至るまで、物語の核心に迫ります。さらに、この物語は実話なのか、そのモデルの有無、作者である大江賢次が込めた想い、そして心に残る読者の感想もご紹介します。また、絶唱の映画が怖いと言われる理由や、この感動的な物語がどこで読めるのかについても、分かりやすく解説していきます。
- 絶唱の詳しいあらすじと登場人物
- 物語のモデルや実話なのかという背景
- 映画版との違いや様々な読者の感想
- 小説をお得に読めるおすすめの方法
「絶唱」小説(作:大江賢次)のあらすじと基本情報

- 物語の主な登場人物を紹介
- 純愛と悲劇を描いたあらすじ
- 物語の読みどころや見どころ
- 悲劇のヒロイン小雪の死因とは
- 作者である大江賢次について
純愛と悲劇を描いたあらすじ
「絶唱」は、身分違いの恋と戦争という過酷な運命に翻弄される、一組の男女の純愛と悲劇の物語です。
舞台は昭和17年頃の山陰地方。大地主の跡取り息子である園田順吉は、園田家で働く山番の娘・小雪と深く愛し合うようになります。二人は結婚を誓いますが、身分の違いを理由に順吉の父・惣兵衛から猛反対されてしまいます。
周囲の反対を押し切り、二人は駆け落ちして松江の町でささやかな新生活を始めます。貧しいながらも、お互いを支え合い、幸せな日々を送る二人。しかし、その幸せも長くは続きませんでした。戦争が激化し、順吉のもとに召集令状が届くのです。
二人の約束「木挽き唄」
出征する前、二人は「毎日午後三時になったら、どこにいても一緒に『木挽き唄』を歌おう」と約束します。この歌が、遠く離れた二人を繋ぐ唯一の絆となります。
順吉が戦地へ赴いた後、小雪は彼の帰りを待ちながら、男たちに交じって過酷な労働に耐えます。しかし、無理がたたって病に倒れ、床に伏す身となってしまいます。やがて終戦を迎え、順吉がシベリア抑留を経て帰還しますが、その時、小雪の命の灯は燃え尽きようとしていました。
順吉の腕の中で、小雪は静かに息を引き取ります。物語はここで終わりません。順吉は、亡くなった小雪に花嫁衣装を着せ、村人たちが嫁入り唄を歌う中、彼女の亡骸を抱いて園田家の門をくぐり、二人だけの結婚式を挙げるのでした。
物語の主な登場人物を紹介

「絶唱」の物語は、魅力的な登場人物たちによって織りなされます。ここでは、物語の中心となる主要な人物をご紹介します。
登場人物 | 設定 |
---|---|
園田 順吉(そのだ じゅんきち) | 物語の主人公。山陰地方の大地主「山園田」の跡取り息子。裕福な家庭に生まれながらも、家の因習や身分制度に疑問を抱いている。思慮深く、純粋な心を持つ青年。 |
小雪(こゆき) | 物語のヒロイン。園田家の山番(山林管理人)の娘。貧しいながらも、明るく健気で心優しい性格。園田家で女中として働くうちに順吉と惹かれ合う。 |
園田 惣兵衛(そのだ そうべえ) | 順吉の父親。園田家の当主として、家の名誉と伝統を何よりも重んじる厳格な人物。順吉と小雪の身分違いの恋に猛反対する。 |
サト | 小雪の母親。娘の幸せを願いながらも、地主である園田家に逆らえない小作人としての立場に苦しむ。娘を想う母性愛が感動を呼ぶ。 |
これらの登場人物が、それぞれの立場や想いを抱えながら、時代の大きな渦に巻き込まれていきます。特に、順吉と小雪の純粋な愛と、それを阻む父・惣兵衛との対立が、物語の大きな軸となっています。
物語の読みどころや見どころ
「絶唱」が時代を超えて多くの人々の心を惹きつけるのには、いくつかの理由があります。ここでは、物語の特に注目すべき見どころを3つのポイントに分けて解説します。
1. 貫き通す純愛の美しさ
この物語の最大の魅力は、何があっても揺るがない順吉と小雪の純粋な愛です。身分制度や戦争という、個人の力ではどうにもならない障壁に阻まれながらも、お互いを想い続ける二人の姿は、読む人の胸を強く打ちます。「愛」そのものの高貴さや尊さを感じさせてくれるでしょう。
2. 鮮やかな自然描写
物語の舞台である山陰地方の自然が、非常に美しく描かれています。順吉と小雪が愛を育む山々の緑や、駆け落ち先から見える宍道湖の風景など、鮮やかな情景描写が二人の純愛をより一層引き立てています。この美しい自然と、戦争に向かう厳しい現実との対比が、物語に深みを与えています。
3. 衝撃的で問いを投げかける結末
前述の通り、物語は小雪の亡骸と結婚式を挙げるという衝撃的なシーンで幕を閉じます。この結末は、単なる悲恋物語で終わらせない、強烈なインパクトを持っています。この行為は純愛の極致なのか、それとも狂気なのか。読者一人ひとりに、愛と死について深い問いを投げかける、非常に印象的なラストシーンです。
悲劇のヒロイン小雪の死因とは

物語のヒロインである小雪は、なぜ若くして命を落とさなければならなかったのでしょうか。彼女の直接の死因は病気です。
作中では、彼女が吐血するシーンが描かれており、当時の時代背景や症状から結核であった可能性が高いと推測されます。しかし、彼女を死に至らしめた根本的な原因は、病気そのものだけではありません。
小雪を追い詰めた二つの要因
- 過酷な労働による肉体的疲労
順吉の帰りを待ちながら、そして彼に心配をかけまいと、小雪は男たちもためらうような製材所での重労働や、看護婦の補助の仕事に身を投じます。物資も栄養も不足していた戦時下で、その労働は彼女の体を確実に蝕んでいきました。 - 順吉への想いと心労
戦地からの便りが途絶え、安否も分からない順吉を待ち続ける日々は、彼女にとって計り知れない精神的ストレスでした。愛する人を想う一途な気持ちと、終わりの見えない不安が、彼女の心と体を少しずつ弱らせていったのです。
つまり、小雪の死因は、戦争という時代がもたらした過酷な環境と、順吉へのひたむきな愛が引き起こした悲劇であったと言えるでしょう。もし戦争がなければ、二人は貧しくとも幸せに暮らし、彼女が命を落とすことはなかったかもしれません。
作者である大江賢次について
小説「絶唱」を理解する上で、作者である大江賢次(おおえ けんじ)の人物像を知ることは非常に重要です。彼は1905年に鳥取県で生まれ、日本のプロレタリア文学を代表する作家の一人として知られています。
プロレタリア文学とは、労働者階級の視点から社会の矛盾や葛藤を描く文学運動のことです。大江賢次自身も貧しい小作農の家に生まれた経験があり、その体験が彼の作品に色濃く反映されています。彼の作品は、社会的なテーマを扱いながらも、人間愛やヒューマニズムに満ちているのが特徴です。
補足:プロレタリア文学とは?
20世紀初頭から1930年代にかけて世界的に広まった文学思潮で、日本では小林多喜二の「蟹工船」などが有名です。「絶唱」も、地主と小作人という身分制度の不条理を背景に描かれており、この文学運動の流れを汲んでいると言えます。
「絶唱」は1958年に発表され、彼の代表作となりました。この作品には、当時の山陰地方の社会状況や、古い因習に縛られる人々の姿がリアルに描かれています。作者自身の出自や経験が、園田順吉と小雪の悲恋物語に深い奥行きと説得力を与えているのです。
小説「絶唱」のあらすじ以外の魅力を語る

- 絶唱は実話?そのモデルを解説
- 心を揺さぶる読者の感想
- 絶唱の映画が怖いと言われる理由
- 小説はどこで読める?
- 絶唱の小説(大江賢次)あらすじ総まとめ
絶唱は実話?そのモデルを解説
この感動的な物語が、全くの創作なのか、それとも実話に基づいているのか、気になるところです。結論から言うと、「絶唱」は実話を元にして書かれた小説とされています。
作者の大江賢次は、山陰地方に伝わる悲恋の物語に着想を得て、この小説を執筆しました。実際に、園田順吉のモデルとされる男性は実在し、物語と同じように愛する女性を戦争で失った後、生涯独身を貫いたと言われています。
また、物語の舞台となる大地主「山園田」にもモデルが存在します。
園田家のモデル「絲原家」
島根県奥出雲町にある絲原(いとはら)家は、江戸時代から大正時代にかけて「たたら製鉄」で栄えた鉄師頭取の家柄です。広大な山林を所有し、その富と権力は絶大なものでした。この絲原家の歴史や佇まいが、作中の園田家のモデルになったと言われています。現在、絲原家は「絲原記念館」として公開されており、当時の暮らしを偲ぶことができます。
ちなみに、ロシア語通訳者でエッセイストとして有名な故・米原万里さんの父方の実家も、鳥取県智頭町の大山林地主でした。彼女の父もまた、恵まれた生活を捨てて思想活動に身を投じた人物です。「絶唱」で描かれた大地主の跡取り息子の葛藤は、当時の知識階層の青年たちが抱えていた普遍的な悩みだったのかもしれませんね。
このように、実在の人物や場所をモデルにすることで、物語には一層のリアリティと深みが生まれています。順吉と小雪の悲劇が、どこかで本当にあった出来事かもしれないと思うと、より一層、物語に感情移入してしまいます。
心を揺さぶる読者の感想

「絶唱」は発表以来、多くの読者の心を打ち、様々な感想が寄せられています。ここでは、その一部をポジティブな意見と、少し違った視点からの意見に分けてご紹介します。
感動と涙を誘うという声
最も多いのは、やはり二人の純愛に対する感動の声です。「涙なしでは読めない」「純粋な愛の形に心を洗われた」といった感想が数多く見られます。特に、戦争という抗えない運命の中で、愛を貫こうとする二人の姿に感動する読者が多いようです。
また、年を重ねてから再読すると、若い頃とは違った感動があるという意見もあります。かつては順吉と小雪の恋愛模様に注目していたのが、親の立場である惣兵衛の苦悩や、娘を想う小雪の母親の愛情に涙するようになった、という感想は非常に興味深いものです。
ラストシーンが衝撃的すぎるという声
一方で、この物語を語る上で欠かせないのが、ラストシーンに対する反応です。多くの感動を呼ぶ一方で、「亡骸との結婚式は怖い」「死者への冒涜ではないか」と感じ、素直に物語に没入できなかったという感想も少なくありません。
この衝撃的な結末は、純愛の究極の形として感動的に受け取るか、それとも常軌を逸した行為として少し引いて見てしまうかで、作品全体の評価が大きく分かれるポイントとなっています。しかし、良くも悪くも、このラストシーンが強烈な印象を残すからこそ、「絶唱」が忘れられない作品となっているのも事実でしょう。
絶唱の映画が怖いと言われる理由

「絶唱」は過去に何度も映画化・ドラマ化されていますが、特に映画版を観た人から「怖い」という感想が聞かれることがあります。その理由は、やはり前述したラストシーンの描写にあります。
映像化によるインパクト
小説で文字で読むのと、俳優が演じる映像で見るのとでは、受け取るインパクトが大きく異なります。特に、山口百恵さんと三浦友和さんが主演した1975年版では、花嫁衣装を着せられた小雪の亡骸と順吉が金屏風の前に並んで婚礼を挙げるシーンが非常にリアルに描かれました。
この場面は、純愛の悲劇性を最大限に高める演出である一方、観る人によっては「怪奇!死美人花嫁」といったホラー映画のような印象を与えてしまうことがあります。愛する人の死を受け入れられず、常軌を逸した行動に出てしまう順吉の姿が、悲しみを通り越して鬼気迫るものとして映るのです。
この「怖さ」は、作品の欠点というわけではありません。むしろ、それだけ観る者の感情を強く揺さぶり、愛と狂気が紙一重であることを感じさせる、強烈な演出の賜物と言えるかもしれません。ただ、純粋な悲恋物語を期待して観ると、その衝撃的な描写に驚いてしまう可能性があることは、心に留めておくと良いでしょう。
小説はどこで読める?
感動的な物語「絶唱」を読んでみたいと思った方のために、小説を入手する方法をご紹介します。現在、いくつかの方法で読むことが可能です。
電子書籍で読む
最も手軽で便利なのが、電子書籍サービスを利用する方法です。「絶唱」は講談社文庫から電子版が配信されています。スマートフォンやタブレット、専用リーダーがあれば、いつでもどこでもすぐに読むことができます。
中でもおすすめなのがDMMブックスです。初回購入限定で利用できる90%OFFクーポンは非常にお得で、他のサービスと比較しても割引率が高いのが特徴です。この機会に、他の気になっていた作品と一緒に購入するのも良いでしょう。
紙の書籍で手に入れる
「やはり本は紙で読みたい」という方は、オンライン書店や街の書店で注文することができます。もし新品が見つからない場合は、古書店やオンラインの中古市場を探してみるのも一つの方法です。古い作品なので、思わぬ価格で手に入る可能性もあります。
個人的には、すぐに読めて保管場所も取らない電子書籍がおすすめです。特にDMMブックスの初回クーポンは本当にお得なので、ぜひチェックしてみてくださいね。
絶唱の小説(大江賢次)あらすじ総まとめ
この記事では、大江賢次の不朽の名作「絶唱」について、あらすじから背景、様々な感想まで詳しく解説しました。最後に、記事の要点をリストで振り返ります。
- 絶唱は作家・大江賢次による不朽の青春文学
- 山陰の大地主の息子・順吉と小作人の娘・小雪の悲恋物語
- 物語の主な登場人物は順吉と小雪、そして父の惣兵衛
- あらすじは身分違いの恋、駆け落ち、戦争による別離、そして悲劇的な再会を描く
- 見どころは貫き通す純愛の美しさ、鮮やかな自然描写、衝撃的な結末
- ヒロイン小雪の死因は過酷な労働と心労による病気(結核と推測)
- 物語は山陰地方に伝わる実話を元にしているとされる
- 大地主「山園田」のモデルは島根県に実在した絲原家
- 映画版が怖いと言われる理由は亡骸との結婚式をリアルに描写しているため
- 原作小説は電子書籍や紙の書籍で読むことができる
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- 身分制度や戦争という理不尽な現実が二人の愛を引き裂く
- 遠く離れた二人を繋ぐ「木挽き唄」が感動を誘う
- 愛とは何か、死とは何かを読者に深く問いかける作品